2011 Fiscal Year Research-status Report
尿路上皮癌におけるS100ファミリー蛋白発現の意義
Project/Area Number |
23791750
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
杉山 貴之 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (70444346)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 尿路上皮癌 / S100蛋白 |
Research Abstract |
本研究は、癌との関わりが示唆されているS100ファミリー遺伝子と癌抑制遺伝子p53との発現様式の関連を尿路上皮癌臨床検体を用い、病理組織学的所見、臨床経過との合わせて評価を行う。また尿路上皮癌細胞株を用い薬剤などでアポトーシス誘導を行い、S100ファミリー遺伝子発現変化を確認し、S100ファミリー遺伝子の発現様式が尿路上皮癌の治療における予後規定因子・再発転移の指標となりうるか、あるいは抗悪性腫瘍剤の効果予測マーカーとなりうるかを検討することである。まず当科にて所有している膀胱癌細胞核T24(p53-mutant),および肺癌細胞株H1299(p53-null)を用いmRNAの発現を確認したところ、HEK293細胞と比較しS100A2ではp53変異株とされるT24で過剰発現を認めた一方、S100A4ではH1299で発現低下をみたがT24ではHEK293、および腎癌細胞株TUHR14TKBと大きな差がなく、2つの遺伝子座が近いにもかかわらず全く異なる変化を示していた。 本年度は、上記に加え、まず手術検体でのS100A4,A2に関するmRNA発現を検討した。腎癌組織においては正常・腫瘍の別採取が可能な例が多く、当講座にて多数検体を保管しているためこちらから開始したが、S100A2に関し、とくに明細胞型腎細胞癌では腫瘍組織で発現が減弱しており、他組織形では発現している例が多いことを見出した(2012年2月ASCO-GUsymposiumにてポスター発表)。これに対し膀胱癌組織では同じprimer、条件でmRNA発現を認めていた(2012年国際泌尿器科学会:SIUに演題登録中)。この要因につき、病理組織別の変化、またS100A2のメチル化につき検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年の計画(1)S100ファミリー遺伝子の発現:膀胱癌細胞細胞でのS100ファミリー遺伝子の発現の量的変化につき、比較対象としてヒト肺ガン細胞(H1299)、およびこれまで用いてきた腎癌細胞(現在使用しているCaki-1、769-Pなど)とともに確認する予定であったが、蛋白レベルの測定は未施行である。現在、当科では腎癌細胞の他、膀胱癌細胞T24、肺癌細胞H1299を所有しているが、一般的にはT24はp53変異株、H1299はp53の欠失株とされる。p53のダイレクトシークエンスに関しては、現在PCR条件の確認作業中であり、テストサンプルでシークエンス確認でき次第細胞株で行う予定である。細胞ストレスによる応答性とこれらS100ファミリー遺伝子群との比較のため、シスプラチンによるよる細胞培養負荷試験は現在継続中である。(2) S100ファミリー蛋白のヒト尿路上皮癌組織での発現量、制御系に関する検討に関しては、上述のごとくS100A2に加え、現在S100A10も同時に行い、プロモーターメチル化に関しても同時に進行中である。上記1)2)とも、蛋白質レベルの解析に関してはふとサンプルによる免疫組織染色を開始しているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年の計画(1)S100ファミリー遺伝子の発現(2) S100ファミリー蛋白のヒト尿路上皮癌組織での発現量、制御系に関する検討に関しては、まずヒト手術摘出組織に関し免疫組織染色、培養細胞に関してウエスタンブロットにて確認作業を現在進行中である。加えて、p53のダイレクトシークエンス・免疫染色を行うよう進めている。細胞ストレスによる応答性とこれらS100ファミリー遺伝子群との比較のため、シスプラチンによるよる細胞培養負荷試験は現在継続中であるため、これを進める また、上述のごとくS100A2に加え、現在S100A10も同時に行い、プロモーターメチル化に関しても同時に進行中である。 これまでの検討より、S100A2に関してはp53の変異(またはp53そのものの発現亢進)例で発現が増加している可能性がある。このため、S100A2の発現意識レベルの低い細胞でのS100A2transfection、またT24でのp53RNA干渉法によるS100A2の変化を検討し、合わせて上記臨床検体での結果・病理/臨床パラメーターとの比較を行い、S100A2発現の意義を検討していく。とくに転移浸潤能に関しては、マトリゲル3次元培養は時間的・費用的に困難が予想されるため、TaqMan assayによる関連遺伝子の発現変化検索を優先する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の実験のための試薬購入が、全研究費に占める割合の中で多くを占めるものと予想される。S100A2発現プラスミドは用意されている。(4) S100ファミリー遺伝子の癌悪性度に関する検討について、上述のごとく3次元培養の開始より先に、転移進展に関する遺伝子変化の検索を行うため、Taqmanプローブ、あるいはpremix plateの購入を検討している。 また、形質導入株に関し、コントロールとの比較でのゲノムワイドな遺伝子発現変化を確認するためRNAマイクロアレイ法を行い候補遺伝子を推定するための費用を計上しているが、これについては上記S100A2強制発現、あるいはp53control下での細胞での検討を予定し、また可能であれば手術検体が順調に増加しているため、背景因子を整えたサンプルを抽出し、転移浸潤のありなしなど悪性度間での遺伝子発現の複数のS100ファミリーの変化につきRNAレベルのスクリーニングをTaqMan assayにて行うための試薬、プレミックスkitの購入を検討している。これまでの成果につき学会発表・論文化についての費用を要する見込みである
|
Research Products
(1 results)