2013 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍内部環境に適応したLNCaP細胞亜株の性状解析
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23791768
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
井口 和弘 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (10295545)
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Keywords | LNCaP細胞 / LNCaP-F10細胞 / TNFSF10 / TRAIL |
Research Abstract |
前立腺癌LNCaP細胞の亜株である低pH耐性LNCaP-F10細胞について、本年度は親株のLNCaP細胞とLNCaP-F10細胞の間での発現量の異なる遺伝子の同定を行った。 まず、発現遺伝子の網羅的解析をDNAマイクロアレイ法により行い、LNCaP細胞とLNCaP-F10細胞の間で発現量が2倍以上異なり、かつ低pH適応の面から興味深い遺伝子を抽出した。さらに、抽出された遺伝子について両細胞間での発現量の差の有無を定量的リアルタイムRT-PCR法にて確認した。その結果、アポトーシス関連因子であるTNFSF10、BIRC5、CASP10、プロトン感受性Gタンパク質共役受容体であるGPR68を見出した。すなわち、LNCaP-F10細胞ではTNFSF10およびCASP10の発現が著しく低いこと、BIRC5の発現が亢進していること、さらにはGPR68の発現はLNCaP-F10細胞においてほぼ認められないことを明らかにした。これらの遺伝子の細胞間での発現量の相違は通常の培養条件下だけでなく、低pHもしくは低栄養・低pHでの培養条件下でも同様に観察された。また、上述の遺伝子のうちアポトーシスに関連する因子については、細胞外低pH環境条件下において発現変動を来たすことを見出した。 TRAIL(遺伝子名TNFSF10)について、低pHによる発現上昇は遺伝子レベルのみならず、タンパク質レベルにおいても観察された。TRAIL遺伝子上流約2000 bpを組み込んだレポータープラスミドを構築し、ルシフェラーゼアッセイを行った結果、低pHによるTRAIL発現変化は転写レベルでの調節であることを明らかにした。また、TRAIL抗体存在下、低pHで誘導されるLNCaP細胞の細胞生存率低下作用の抑制が観察された。これらの結果より、低pH条件で引き起こされるLNCaP細胞の細胞生存率低下にTRAILの発現誘導が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「研究実績の概要」に記したように、おおむね当初の研究実施計画に沿った実験を遂行することができ、かつ、適切な実験結果を得ることができたため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画通り、平成26年度は平成25年度に抽出された遺伝子についてLNCaP-F10細胞の持つ腫瘍内部環境適応能に寄与するものであるかについて検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学内異動による研究環境の変化に伴い、予定していた学会発表等に至らなかったため。 次年度の研究実施計画に沿った研究実施のための試薬購入費および旅費に補てんして使用する。
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