2011 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌の進展におけるケモカインと腫瘍関連マクロファージの機能解析と発現制御
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23791785
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
城武 卓 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10528805)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 前立腺癌 |
Research Abstract |
当院で診断、治療された前立腺癌138例を用いてMCP-1およびマクロファージの免疫染色を行い、各種臨床的パラメータとの関連を統計学的に検討した。In vivoおよびin vitroの検討では、LNCaP、C4-2、C4-2AT6という徐々にアンドロゲン非依存性を獲得する3種類のヒト前立腺癌細胞株を用いた。AT1Rを介したMCP-1の制御について免疫染色、ウェスタンブロット法、およびELISA法を用いて検討した。ARBはカンデサルタン(in vivo; TCV116, in vitro; CV11974)を用いた。 臨床検体においてGleason score 7以上、pT3以上およびCRPC症例でMCP-1の発現ならびにマクロファージの浸潤が有意に多かった。多変量解析の結果、PSA再発に関する独立危険因子は術前PSA 15ng/ml以上とMCP-1高発現であり、MCP-1の制御機構の解明の重要性が示唆された。 In vivoの検討では、C4-2AT6皮下腫瘍モデルでAT1RおよびMCP-1の発現が最も高く、TCV116によってMCP-1の発現とマクロファージの浸潤を有意に抑制した。またin vitroではC4-2AT6において、AngII刺激による有意なMCP-1の発現上昇を認め、CV11974によって有意な抑制効果を認めた。 前立腺癌の高悪性度症例やCRPC症例においてMCP-1の発現およびマクロファージの浸潤が高く、とくにMCP-1の高発現はPSA再発の独立危険因子のひとつであった。In vivoおよびin vitroの検討で、AngII/AT1R pathwayが、前立腺癌における MCP-1の発現制御機構のひとつであることが示された。これらは高悪性度の前立腺癌、とくにCRPCに対する新規の治療標的となり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<1.前立腺癌臨床検体における領域別のleukocyte infiltrationならびにケモカイン発現の解析> 当教室における臨床検体を用いて、MCP-1およびマクロファージの浸潤がグリソンスコアを含めた悪性度に関連し、さらに統計学的解析においてPSA再発の独立危険因子のひとつであることを見出した。<2.アンドロゲン依存性前立腺癌モデルLNCaP、去勢抵抗性前立腺癌モデルC4-2 、C4-2AT6の培養とxenograft modelの作成> 当教室では皮下腫瘍モデルの作成は確立していた。とくにC4-2AT6は当教室で新たに作成された細胞株であり、去勢抵抗性前立腺癌の研究においてきわめて有用な細胞株である。<3.Xenograft modelを用いて各前立腺癌細胞株の腫瘍微小環境における血管新生関連因子とケモカイン、マクロファージ発現の比較検討> 臨床検体と類似した結果であり、悪性度に相関してMCP-1およびマクロファージの浸潤を認めた。<4.前立腺癌細胞株が有するマクロファージ遊走能の測定> 現在、検討中である。当該年度において、(1)~(3)は計画通り遂行することができ、前立腺癌に発現するAT1Rを介した制御機構を見出すことができたため、おおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の研究を推進する。(1)癌細胞浸潤・転移におけるMCP-1の機能解析とくに前立腺癌骨転移モデルを作成し、骨転移巣の腫瘍微小環境におけるケモカインやマクロファージの浸潤を検討し、その役割や機能について検討する。(2)MCP-1-マクロファージ系を制御する上流シグナル伝達の解明当教室では、シグナル伝達機構の解析に関する実験系は確立している。MCP-1のみならずIGF、EGF、bFGFなど他の成長因子や血管新生関連因子についても検討し、PI3k-Akt系を含めMAPK系やStat系などのシグナル伝達分子について解析する。また、MCP-1以外の因子についても引き続き検索していく。これらで得られた結果は、再度in vivoで検討を加え、さらには臨床検体における発現レベルを検討することによって、実臨床での応用を期待したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の直接経費の使用計画は以下の通りである。動物実験(マウス)およびその飼育費用および各種抗体、試薬 \800,000学会発表 \100,000研究補助および外国語論文の校閲、研究成果投稿料 \200,000各種消耗品(実験材料や試薬等)は必要であるが、新たな機材は要しない。
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