2012 Fiscal Year Research-status Report
腎細胞癌における新規VHL関連蛋白の発見とその分子間相互作用と細胞応答の究明
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23791795
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
吉田 毅 産業医科大学, 医学部, 助教 (30596648)
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Keywords | VHL / HIF / EMT / 腎細胞癌 |
Research Abstract |
本研究の目的となっているVHL関連タンパクの候補として選定した分子マーカーを用いて腎細胞癌の病理検体における発現の違いを免疫染色で確認した。とくに腎細胞癌のサブタイプにおけるEMTマーカーの発現の違いを検討した。EMTマーカーの一つであるSnailの発現が腎細胞癌のサブタイプである乳頭状腎癌の特にTypeIとTypeIIにおいて発現の差が認められた。この結果は学会で報告した。さらに免疫染色の発現の結果をmRNAレベルで証明するために、免疫染色に用いた病理組織標本よりmRNAを抽出しsemiquantitativePCRを行いmRNAレベルでの発現の相違を確認した。免疫組織染色の結果と同じ傾向を確認することができ、この結果を学会で報告した。 VHL-HIFシグナル伝達経路に対するTWISTの関与の検討については、TWISTの転写活性をみるためにレポーターアッセイを行った。HIF binding elementを組み込んだレポーターベクター(Luc-HRE)とTWIST発現ベクターを培養細胞内に共発現させると、TWISTはレポーターベクターの転写活性を亢進させた。この結果を基に、VEGF遺伝子のプロモーターのHREエレメント領域にTWISTが結合しているかChIPアッセイで確認した。この結果、TWISTはVEGFの一部のHREエレメントの周辺領域に結合していることが分かった。 この結果を基に平成25年度にはsiRNAを用いてTWISTをノックダウンさせた細胞におけるアッセイや、オリゴDNAにTWISTタンパクが本当に結合するか確認するためのGel shiftアッセイ、TWISTの発現に対する細胞応答を見るためにin vitro血管新生アッセイを行い、これらをまとめて学会報告、論文発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は実験の立ち上げ、実験に必要なExpression Vectorの作成・クローニング、供与・購入に時間がかかったが、その代わりに免疫染色実験を先行させた。昨年度より引き続き本研究の目的となっているVHL関連タンパクの候補として選定した分子マーカーを用いて、腎細胞癌の病理検体における免疫染色を行った。EMTマーカーの一つであるSnailの発現が腎細胞癌のサブタイプである乳頭状腎癌の特にTypeIとTypeIIにおいて発現の差があることを見つけることができた。また、この免疫染色の発現の結果をさらにmRNAレベルで証明するために免疫染色に用いた病理組織よりmRNAを抽出しsemiquantitativePCRを行いmRNAレベルでの発現の相違を確認し、免疫組織染色の結果と同じ傾向を示すことを確認することができた。これらの発見により、次年度に症例数を増やして病理・臨床パラメーターとの統計学的有意差を確認し、この結果を論文として発表する予定であり、3年間の研究助成期間内に一定の結果を出すことができる予定となり、おおむね順調に進展していると判断した。 VHL-HIFシグナル伝達経路に対するTWISTの関与の検討については、昨年度から引き続き、TWISTの転写活性をみるためにレポーターアッセイを行いTWISTはレポーターベクターの転写活性を亢進させることを見出すことができた。この結果を基に、VEGF遺伝子のプロモーターのHREエレメント領域にTWISTが結合しているかChIPアッセイで確認しTWISTはVEGFの一部のHREエレメントの周辺領域に結合していることを見出すことができた。この結果をふまえてさらに平成25年度はsiRNAを用いた実験と細胞応答に関する実験を進め、まとめた結果を最終年度内に論文発表する予定であり、おおむね予定通りの進展状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
VHL-HIFシグナル伝達経路に対するTWISTの転写活性制御能をみるためにレポーターアッセイや転写結合を特定するChIPアッセイで確認してきたが、本年度まではTWISTの過剰発現させて確認してきた。平成25年度はsiRNAを用いてTWISTをノックダウンさせた細胞におけるアッセイを行う予定である。 さらに転写領域へのTWISTの結合をGel shiftアッセイにより確認する。TWISTの強制発現した場合の下流の分子の発現を見るためのタンパクレベルでのWestern Blotアッセイを行う。 TWISTの発現による細胞応答を見るためのアッセイを中心に進める予定であり、特に、細胞応答を見るために、HIFのターゲット分子としてVEGFに注目しin vitro血管新生アッセイや、Wound healingアッセイ、細胞増殖の変化をMTTアッセイで確認する。これらをまた、TWISTを強制発現させた場合とsiRNAでノックアウトさせた場合での応答の変化を確認する。 分子マーカーを用いた腎細胞癌の各種サブタイプにおける免疫染色の検討は、病理組織よりmRNAを抽出して行うsemiquantitativePCR実験と並行して進め、症例数を増やし、特に乳頭状腎癌におけるSnailの発現の有無と病理・臨床パラメーターとの統計学的有意差を確認する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
VHL-HIFシグナル伝達経路に対するTWISTの転写活性をみるためにレポーターアッセイや転写結合を特定するChIPアッセイで確認してきたが、TWISTの過剰発現により確認してきた。平成25年度はsiRNAを用いてTWISTをノックダウンさせた細胞におけるアッセイを行うために、VHLやHIFのsiRNAを購入する予定である。オリゴDNAにTWISTタンパクが本当に結合するか確認するためのGel shiftアッセイには[32P]放射性同位元素を用いるためにこれらを購入する必要がある。またTWISTの強制発現した場合の下流の分子の発現をタンパクレベルで確認するためWestern Blotアッセイを行うための抗体、メンブレン、現像物品を購入予定である。TWISTの発現に対する細胞応答を見るために、in vitro血管新生アッセイやProliferationアッセイ、MTTアッセイを行うために各種キットを購入する予定である。特にTWISTの発現による細胞応答を見るためのアッセイを中心に物品を購入する予定である。 免疫染色とsemiquantitativePCR実験に関しては、症例数を増やすことで不足すると思われる抗体や試薬を購入する必要がある。またパラフィン包埋よりmRNAを抽出するFFPEキット、逆転写酵素キット、PCRに必要な酵素や試薬を追加購入する予定である。 今年度に繰り越しが生じたのは、昨年度実験の立ち上げが遅れたことにより昨年度からの交付金の繰り越しがやや多かったためであり、研究としては進んでおり本年度の物品費使用額は当初の予定よりも超過している。来年度は最終年度であり、予定交付額を残余なく使用する予定としている。
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Research Products
(4 results)