2012 Fiscal Year Annual Research Report
分岐型ジシアリル糖鎖抗原による腎癌悪性化メカニズムの解明
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23791796
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Research Institution | 公益財団法人野口研究所 |
Principal Investigator |
土田 明子 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (70378024)
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Keywords | 糖転移酵素 / 腎癌 / Disialyl糖鎖 / 腫瘍マーカー |
Research Abstract |
腎癌細胞株細胞表面に発現している糖鎖抗原の解析結果から、約70%の腎癌細胞株において、Lacto系列糖脂質糖鎖Disialyl Lc4(DSLc4)の末端にGalNAcがbeta1-4結合したDisialyl糖鎖(GalNAc-DSLc4)が発現していることを確認した。そこでDisialyl糖鎖の発現パターンの変化が腎癌での悪性化や転移性に関連していると推測し、GalNAc-DSLc4の合成機構と機能の解析を行ってきた。これまでに、GalNAc-DSLc4の合成に関わる糖転移酵素遺伝子beta4GalNAc-T2を、腎癌細胞株に遺伝子導入し、糖鎖リモデリングの結果惹起される表現型の変異を解析した結果、樹立したGalNAc-DSLc4安定発現株の増殖能および浸潤能が、コントロール細胞株よりも亢進していることを明らかにした。また、リアルタイム細胞形態計測システムを用いて、細胞外基質をコーティングした表面に対する細胞の接着形態を調べたところ、GalNAc-DSLc4安定発現株がラミニンコーティングプレートに特異的に接着することを見出した。これらの表現型は、いずれもFCS存在下において顕著に見られたため、FCS添加時の細胞内シグナル分子の変化と悪性化に関与する分子の同定を行なった。その結果、安定発現株細胞内におけるAktシグナルのリン酸化レベルはコントロール細胞株よりも高く、PI3K阻害剤(LY294002)を添加することで、その浸潤能やラミニンへの接着能は抑制されることから、安定発現株のさまざまな悪性形質はPI3K-Aktシグナル経路が活性化されていることに起因すると考えられた。これまでに得られた知見から、細胞膜表面のGalNAc-DSLc抗原が、チロシンリン酸化受容体の細胞膜上での局在や二量体化などに深く関与し、PI3K-Aktシグナル経路を活性化させる可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)