2012 Fiscal Year Research-status Report
生殖細胞特異的に発現するエストロゲン受容体beta標的遺伝子Bnc1の機能解析
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23791803
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井原 基公 東北大学, 大学病院, 助教 (50403506)
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Keywords | 卵成熟 |
Research Abstract |
卵母細胞の成熟過程における卵胞発育障害は早発閉経や高齢不妊患者において治療困難な病因であり、それらの大半は原因不明である。生殖細胞とkeratinocyte特異的に高発現するBasonuclin1(Bnc1)の遺伝子発現が、エストロゲン受容体beta(ERβ)によって制御されることを見い出し、Bnc1の機能が卵母細胞の発育に重要な役割を果たしている可能性を見出したが、卵母細胞におけるBnc1の生理的意義については依然不明である。 今年度は、Bnc1のプロモーターに直接結合し、Bnc1の遺伝子発現を直接制御することが最近報告されたTAp63alphaによるBnc1の遺伝子発現制御について、HeLa細胞を用いて検討した。Tap63はアポトーシスを介して傷害された生殖細胞を排除する。HeLa細胞にはBnc1タンパクがほとんど発現していないことが既に明らかになっており、TAp63alphaをHeLa細胞に過剰発現させた場合、免疫染色やWestern BlottingでBnc1タンパクの発現に変化は認められなかった。この結果は、細胞特異的にDNAの修飾(メチル化など)が異なるためにTap63alphaがBnc1プロモーターに結合できないか、細胞特異的なsiRNAが存在するためにBnc1が発現できない可能性を示している。 一方、マウス卵母細胞においてBnc1タンパクの発現は卵母細胞の成熟に応じて増加していくが、逆にTAp63alphaの発現量は減少することが分かった。従って、Bnc1の遺伝子発現制御には、TAp63alpha以外の他の転写因子が主に関与することを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は震災の影響による建物の耐震工事が始まっているため、引っ越しを余儀なくされている。また、その準備に余計な労力と時間が割かれている。特にマイクロインジェクションのシステム構築はとても大変であり、業者に頼む必要があるため、マイクロインジェクションを用いた実験が特に滞っている。平成25年度は更にもう一度引っ越しをし直さなければならない。 代替的に培養細胞を用いた実験系に切り替えて当初の予定に近い系を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、現在マイクロインジェクションによる実験系は震災の影響で滞っているが、農学部と動物実験施設と交渉して平成25年度は本研究の一部を遂行することができる。すなわち、Bnc1 mRNAをマウス卵母細胞に過剰発現させ、できるところまで分子レベルでBnc1の機能を解析する。また、顆粒膜細胞を除去した状態で卵母細胞をエストロゲン添加培養液で培養し、卵母細胞の成熟過程を観察する。また、ERβ選択的アゴニスト (diaryl-propionitrile: DPN)添加やERβ阻害剤 (ICI182,780)を添加し、Bnc1の発現変化をRT-PCRで解析する。 ヒト38~45歳に相当する60~70週齢マウスと、対照群として6~8週齢のマウスから卵母細胞を採取し、それぞれのBnc1遺伝子発現をRT-PCRで比較検討する。 また、収集した卵母細胞1つずつ(3つ/匹x3匹x2群)からそれぞれRNAを増幅・逆転写し、GeneChipを用いたマイクロアレイ解析でエストロゲン依存的な不妊の原因遺伝子を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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