2011 Fiscal Year Research-status Report
慢性炎症性疾患としての子宮内膜症における小胞体ストレスの意義
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23791813
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 亜希子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50598159)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / 慢性炎症 |
Research Abstract |
子宮内膜症の慢性炎症に対する小胞体ストレスの関与を検討するため以下の検討を行った。1つ目に、異所性子宮内膜症組織の定常状態における小胞体ストレスを検討した。手術より得られた異所性子宮内膜症組織におけるsXBP1(小胞体ストレスマーカー)の発現を定量的PCRにて検出した。2つ目に、1と同様に得られた子宮内膜組織におけるsXBP1の発現を検討した。正常女性と子宮内膜症患者に分けて月経周期での影響を検討した。正常女性では増殖期前期、増殖期中期、分泌期後期に小胞体ストレスは高値を示した。子宮内膜症患者ではそれに加えて分泌期前期も高値を示した。両群での基礎値は子宮内膜症患者において高値を示した。また子宮内膜症患者において、子宮内膜組織と異所性子宮内膜症組織を比較すると異所性子宮内膜症組織では低値を示した。以上より子宮内膜症患者においては子宮内膜における小胞体ストレスは基礎値、変動ともに正常女性とは異なることが示された。また子宮内膜症の成因として逆流説を考えた場合、子宮内膜から異所性子宮内膜症組織が形成されると小胞体ストレスは減弱することが示された。3つ目に、子宮内膜および子宮内膜症細胞における慢性炎症と小胞体ストレスについて検討した。両細胞に小胞体ストレス誘導剤であるツニカマイシンを添加すると炎症性サイトカインであるIL-8の合成が増加することをELISAにて確認した。また両細胞にツニカマイシンを添加しsXBP1の発現を定量的PCRにて測定すると高値を示した。以上より両細胞において小胞体ストレスは炎症を惹起し、さらに炎症によって小胞体ストレスが誘導されるという負のサイクルが認められることが示された。これらは子宮内膜症の一因となっている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
子宮内膜症における小胞体ストレスについて、いくつかの興味深いデータを得ることができた。これらのデータの解析と解釈などに時間を要したため、当初の予定において施行できなかった内容も生じた。また、予定していた検体が諸事情により入手できない事態に陥り、十分なデータが得られなかった部分も生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に行う予定であった腹腔内マクロファージ、子宮内膜症マウスモデルにおける小胞体ストレスの関与につき検討を行う。また、子宮内膜症の癌化に対する小胞体ストレスの関与を検討する。子宮内膜症性卵巣嚢胞と卵巣癌を合併した症例での組織切片にてsXBP1の発現をin situ hybridization法にて検討する。癌化の一因と考えられる上皮間葉転換が小胞体ストレスにより誘導されるかについて、子宮内膜症細胞にツニカマイシンを添加して上皮マーカーであるE-cadherinの発現をPCRにて検討する。さらに、小胞体ストレス治療薬による子宮内膜症治療の可能性について、子宮内膜症性モデルマウスを用いて検証する。小胞体ストレス治療薬としてXBP1 siRNAやsalubrinalなどを投与し、子宮内膜症病変の重量や数、腹腔内貯留液における炎症性サイトカインを測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き子宮内膜症と小胞体ストレス、慢性炎症の影響を検討するため種々の培養試薬、添加試薬、測定試薬や測定キット、実験用マウスの購入にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)