2012 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌におけるモルフォゲンシグナルのシステム生物学的解析による治療開発
Project/Area Number |
23791834
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 弓子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10402918)
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Keywords | 卵巣癌 / BMPシグナル / 細胞増殖 / 上皮間葉移行 |
Research Abstract |
マイクロアレイデータセットGSE3149を用いて漿液性卵巣癌の組織片におけるBMPシグナリングの細胞内伝達物質であるSMAD5の発現を検討したところ、SMAD高発現のグループは低発現のグループと比較して有意に予後が不良であった。 2002年から2008年に京都大学付属病院にて初回治療をおこなった36人の漿液性卵巣癌患者の標本を用いて、BMPシグナル活性化の細胞内指標であるリン酸化SMAD5の免疫組織染色を行った。リン酸化SMAD5高発現のグループは低発現のグループと比較して、全生存率、無病生存率ともに有意に予後が不良であった。漿液性卵巣癌細胞株はBMP2刺激によりSMAD5のリン酸化が亢進し核内へ移行し、また細胞増殖が促進されたBMPによる増殖亢進はG1/S期移行の亢進によるものであった。 免疫不全マウスに漿液性卵巣癌細胞株を皮下投与して腫瘍を形成させたところ、BMPは腫瘍増大を促進させ、シグナル阻害物質にて抑制された。またこの腫瘍を摘出して免疫染色を行ったところ、Dorsomorphi投与群ではリン酸化SMAD5が高発現し、また増殖活性を示すKI67の発現も亢進していた。以上よりBMPシグナリングは卵巣癌の予後に関与しており治療ターゲットとなりうることを示した。 Epithelial-Mesenchymal Transition (EMT;上皮間葉移行) は上皮細胞が間葉系様細胞に形態変化する現象であり、癌細胞の浸潤、転移との関連が示唆されているが、BMPシグナル促進にてEMTに特徴的な分子の発現が変化し、形態学的にも上皮細胞が間葉系細胞に類似した携帯に変化することが確認できた。以上より、BMPシグナルは細胞増殖だけではなく、癌細胞の浸潤、転移と関連する事が示唆された。
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Research Products
(2 results)