2011 Fiscal Year Research-status Report
不妊治療の分子標的治療をめざしたSTAT3活性化のための標的分子候補の検索
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23791837
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 仁美 大阪大学, 医学部附属病院, 特任臨床検査技師 (80467571)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 着床不全 / 不妊症 / プロゲステロン / STAT3 |
Research Abstract |
現在の不妊治療において着床不全の治療方法を確立する事が求められている。これまでに多くの物質の関与が報告されてきたが、臨床的には黄体補充としてプロゲステロン製剤が使用されて続けてきた。我々の検討から着床期子宮におけるSTAT3活性が着床不全不妊症の病態の重要な分子標的の一つであることが示唆された。最近の研究から乳癌細胞株などでプロゲステロンの作用によりSTAT3が活性化する事から、子宮においてもプロゲステロン-プロゲステロン受容体 signalによりSTAT3活性が誘導される可能性が考えられる。ではなぜ既存のプロゲステロン補充の治療効果は充分ではなかったのか?着床不全不妊症の治療に対する新たな分子標的の検索のためにプロゲステロン-プロゲステロン受容体からSTAT3活性のシグナル伝達についてin-vitroおよびin-vivoで解析する事を目的とした。本年度はin-vitroにおける検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト子宮内膜細胞株を用いて、これにプロゲステロンをエストロゲン存在下および非存在下に添加して、STAT3活性について検討を行った。プロゲステロン製剤として、天然型プロゲステロン、合成プロゲステロンであるMPAおよびディナゲストを用いた。MPAはプロゲステロン受容体だけでなく、アンドロゲン受容体にも作用するのに対して、ディナゲストはプロゲステロン受容体に特異的に結合する。近年、プロゲステロン受容体は核内における受容体結合を介さず、それ自身が転写因子のように作用する事が報告されている一方で、古典的な核内の受容体を介する結合はエストロゲンの存在下におこると考えられてきた。そこで、天然型プロゲステロン、合成プロゲステロン製剤のMPAおよびディナゲストをエストロゲン存在下および非存在下に添加して、経時的なSTAT3活性について検討を行った。すべてのプロゲステロン製剤の添加により、エストロゲンの存在に関係なくSTAT3活性は添加15分後に上昇する事がわかった。エストロゲン単剤でも同様の現象が認められた。エストロゲンの単剤では添加後24時間後に再びSTAT3活性のピークを認めた。プロゲステロン受容体に特異的に結合するディナゲストではエストロゲンの非存在下において24時間後に再びSTAT3活性のピークを認めたが、エストロゲンの存在下ではこれを認めなかった。MPAの添加ではエストロゲン非存在下において48時間後にSTAT3活性の再ピークを認めるが、エストロゲン存在下においては、これが有意に低下する事が認められた。さらに、これとは別の系において、着床期子宮内膜においてはまず、LIFを介して、STAT3が活性化し、胚の接着が誘導され、その後、IL-11を介したSTAT3活性により脱落膜化が誘導される事を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、 (1)プロゲステロン受容体の核内における受容体結合を介さずSTAT3を活性化する系と(2)核内受容体結合を介したSTAT3活性の系(3)エストロゲンによるSTAT3活性の3つのSTAT3活性経路がある事が認められた。そこで、それぞれの系について検討を行う。(i)RU486を添加(ii)SRC kinase-inactive dominant negative mutant cDNAおよびSRC inactive autophosphorylation site mutantの遺伝子導入を行い、Jak1、Jak2、LIF、IL-11の発現とSTAT3活性、NF-kappaB活性の検討を行う。この結果をふまえて仮説通りであれば、PR、SRCを、もしくはその間の分子を標的としてdominant negative constructの強制発現ベクターもしくはdecoy、およびその分子の過剰発現ベクターを作成する。この結果を受けてin-vivoの系において着床を抑制および促進するモデル実験の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Jak1、Jak2、LIF発現の検討については、抽出したタンパクを用いてwestern blottingを行う。in-vitroの系においては、培養上清を用いて、LIFおよびIL-11のELISAによる検討を行う。STAT3活性については、4xM67 pTATA TK-Luc (Addgene, Cambridge, MA)およびRenilla luciferase control reporter vector (herpes simplex virus thymidine kinase; HSV-TK promoter; Promega, Madison, WI) をLipofectamine™ LTX and PLUS™ Reagents (Invitrogen, San Diego, CA)にてIshikawa細胞に対して遺伝子導入を行い、Dual-Luciferase® Reporter Assay System (Promega)を用いて、Renilla luciferaseおよびluciferaseのdulal luciferase assayを行う。NF-kappaB活性については抽出した核蛋白を用いてEMSAを行う。In-vivoの系において、マウス子宮にHVJ-E vectorを用いてin-vitroの検討で同定されたprogesterone-PRからSTAT3活性の過程における分子のdecoyまたはdominant negative construct強制発現ベクターもしくは、過剰発現ベクターの遺伝子導入を行う。今後の研究費は、以上の研究をすすめるために使用する予定である。
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