2011 Fiscal Year Research-status Report
VAV1-Rac1-PAK1経路の制御による卵巣癌の新たな治療戦略の開発
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23791842
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
若橋 宣 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 医学研究員 (80596651)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 上皮間葉移行 / 卵巣癌 |
Research Abstract |
【VAV1発現は卵巣癌early-stage (stage I-II)の予後に影響を与える。】科研申請時において我々は進行期I-IV期卵巣癌ではVAV1-PAK1陽性群と陰性群で全生存期間、無増悪生存期間に有意差があることをすでに知見として得ていたが、免疫染色の結果を再度検討したところ、I-II期の早期卵巣癌においてVAV1発現陽性のみでも陰性群に比し全生存期間、無増悪生存期間が有意に低下することを新たに見いだした、この事はVAV1-Rac1-PAK1の経路を介さないVAV1の分子生物学的活性が早期卵巣癌の予後に影響を与える可能性を示唆している。【VAV1発現は抗癌剤感受性試験には影響をあたえない】我々は先に卵巣癌細胞株(SKOV3)にVAV1発現ベクターを導入しVAV1恒常的発現細胞株(SKOV3-VAV1)を樹立しており、この細胞にたいする抗癌剤感受性試験をおこなった。パクリタキセル、シスプラチンなどの感受性試験をおこなったが、結果として感受性に差は認めていない。【SKOV3-VAV1はmorphologyに影響を与えた】SKOV3がVAV1恒常発現によりどのように変化を受けたかと調べるため、3D cultureをおこなっている。野生株が桑実状に増殖できたのにたいし、SKOV3-VAV1は桑実状に組織構築することができなかず、細胞間接着の脆弱性を示唆した。【SKOV3-VAV1はVAV1発現に依存性にE-cadherin発現を低下させた】SKOV3-VAV1の3D cultureの結果から、細胞間接着に注目した我々は、E-cadherin発現について検討をおこなった。ウェスタンブロット法によりE-cadherin発現はVAV1発現に依存して低下を認め、VAV1導入が卵巣癌の上皮間葉移行に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣癌の予後に与える影響として当初、想定されていたのはVAV1-Rac1-PAK1経路の活性化であったが、免疫染色の結果はVAV1単独発現でも卵巣癌の予後に影響を与えることを示唆していた。今回、SKOV3-VAV1ではVAV1発現に依存してE-cadherinの発現低下を認めているが、Rac1阻害剤の使用でE-cadherinの発現の回復は認められず、E-cadherin発現の制御にVAV1-Rac1-PAK1経路が関与していないこと推測される。VAV1のE-cadherin低下とそれにともなう上皮間葉移行は、いままで予想していた経路以外から生じている可能性があり、今後の展開に期待が持てる。
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Strategy for Future Research Activity |
VAV1のE-cadherinに対する影響を評価するためにE-cadherin発現を制御するtranscriptional factorの検討をおこなう。また、現在知られているVAV1-PAK1以外のVAV1が関与する経路にたいする阻害剤を用いて、E-cadherin発現の抑制が回復するかを検討する。VAV1導入が生体内での腫瘍増殖にどのように影響をあたえるかヌードマウスを使用して、腹膜播種モデル含めて検討を行いたい。他の卵巣癌細胞株でのVAV1発現についても検討を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越した予算でtranscriptional factor検討用に抗体を購入する,計画当初の予算でreal time PCR試薬、卵巣癌細胞株、各種阻害薬および実験動物を購入する。
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