2011 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸癌の新たなバイオマーカーの検索ー測定系の確立と分子標的治療への応用ー
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23791845
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
末岡 幸太郎 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40452643)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 子宮頸部扁平上皮癌 / HSP70 |
Research Abstract |
扁平上皮癌で明らかに増加する蛋白として我々が同定した、Transgelin, Protein disufide-isomerase(PDI), HSP70, HSP27のうち、まずはHSP70に着目し、機能解析を行った。【方法】ヒト子宮頸癌細胞株 ( BOKU、ME-180、SiHa、SKG l、SKG ll、SKG llla ) においてHSP70の発現をWestern blottingで確認した。SiHa、SKG llにおいてsiRNA法によりHSP70の発現を抑制したうえで、以下の具体的な機能について解析した。1. 増殖能および細胞周期、アポトーシス、2. 遊走能、3. 浸潤能について検討した。さらにCDDP添加によるストレス下でのHSP70の役割を検討する目的で、4. アポトーシス細胞の割合を検討した。【成績】 正常細胞であるケラチノサイトと比較し、すべての子宮頸癌細胞株でHSP70の発現は増加していた。機能解析の結果は、1. HSP70の発現抑制により増殖能は有意に抑制され、細胞周期はG2/M期に停止が認められた。なお、アポトーシスには有意差を認めなかった。2, 3. HSP70の発現抑制により遊走能および浸潤能は有意に抑制された。 4. HSP70の発現抑制によりCDDP添加で誘導されたアポトーシス細胞の割合は有意に増加した。【結論】子宮頸癌におけるHSP70の発現抑制は癌の増殖、浸潤・転移に抑制的に作用するだけでなく、抗癌剤の作用を増強させることが示された。HSP70の発現抑制は従来の治療に加えた新規の癌分子標的治療としての抗腫瘍作用の増強が期待できると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HSP70の機能として子宮頸部扁平上皮癌細胞の遊走能や浸潤能が更新することは分かったが、その機序を解明するために、遊走、浸潤の重要な因子であるE-adherinあるいはMMPなどの分子に注目し、その変化を観察したが有意な結果は得られず、条件設定なども含めて時間を費やし、計画が順調に進まなかった主な要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
子宮頸癌におけるHSP70蛋白の発現を調査し、予後との関連性を検討する。多数症例の病理組織標本を用いて、免疫組織学的染色を行い、細胞内局在と発現強度をもとにした染色パターンの決定とその発現態度を解析し、分類する。この発現パターン分類をもとにして骨盤リンパ節への転移や予後(無進行生存・全生存)との関連性について統計学的に解析する。さらに特に前癌状態である異形成から上皮内癌、浸潤癌と病変が連続性に病変が進行していることが明らかである標本を選択し、どの段階からHSP70発現が増加するか調べ、早期診断をするためのマーカーとなりうるか検討する。上記の検討により、HSP70が癌発生初期のマーカーとなりうる可能性と、実際に予後との関連が見いだせれば、臨床応用を目指して、血液を利用したより簡易な測定系の確立を目指す。血液中のHSP70の発現の有無、量は不明であるために、予備実験として培養細胞の上清におけるHSP70の発現の有無、量を実験する。1. HSP70に特異的な抗体(市販されている)をマイクロプレート上にコートする。2. ELISAあるいは EIAの測定系によって血液中の目的蛋白量を測定する。また今年度の追加としてHSP70の癌細胞の浸潤転移に関わるメカニズムの解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HSPの培養細胞の実験が順調に行かず、多数症例での免疫組織染色実験が未施行であり、それに伴う抗体など購入していないことが未使用額が生じた理由である。今年度は免疫組織染色を施行予定であり、組織スライドの作成と抗体購入に費用がかかる。また今年度の追加としてHSP70の癌細胞の浸潤転移にメカニズムの解明のために、細胞培養関連試薬(培養液、血清、抗生剤、培養プレート、ピペット等)が必要となる。さらにはELISA、EIA免疫測定系確立のため抗体、プレートが主な物品費となると思われる。また研究成果を国際学会で発表する予定であるので、渡航費が必要となる。
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