2011 Fiscal Year Research-status Report
対立遺伝子間遺伝子発現相違に起因する子宮体癌発症メカニズムの解明
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23791847
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
恒松 良祐 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20380529)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | AED / 子宮体癌 / MDM2 / PCR-SSCP |
Research Abstract |
細胞老化誘導シグナロソーム破綻へのAllelic Expression difference(AED)の関与を明らかにするために、MDM2遺伝子の3'非翻訳末端のSNP(rs1690916、A/G)をマーカーSNPとして子宮体癌患者および対照群各45例(マーカーSNPがヘテロであったのはそれぞれ20例、23例)より採取した組織(子宮体癌組織および正常子宮内膜組織)よりゲノムDNAおよびmRNAを抽出し、上記SNPを含む領域をPCR法およびRT-PCR法により増幅しSSCP法を用いて解析した。正常子宮内膜組織ではゲノムDNAおよびmRNA上のマーカーSNPの存在比はいずれも1:1であり、AEDが存在しないことが明らかとなった。一方で子宮体癌患者由来の20例中2例において、ゲノムDNAでのマーカーSNPの存在比が1:1であるにもかかわらず、mRNA上のマーカーSNPの存在比が大きく異なることが明らかとなり、これらにおいてはAEDが存在することが示唆された。MDM遺伝子にはP1、P2という2つのプロモーターが存在し、上記マーカーSNPのmRNA上の存在比は両プロモーターからの遺伝子発現の総和の違いをみていることになる。そこでP1プロモーター由来の転写産物のAEDを同様にPCR-SSCP法で解析したところ、P1プロモーターからの遺伝子発現にはAEDが存在しないことが明らかとなった。以上のことからMDM遺伝子のAEDはP2プロモーターに由来すると考えられた。P2プロモーターでは転写因子Sp1の結合配列上にあり、Sp1の親和性に影響を与えるSNP309がよく知られているが、われわれはこれとは別にP2プロモーター上のさらに5'側に新規のSNPを同定しており、今後このSNPを含めてMDM2遺伝子におけるAEDの分子機構の解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はRT-PCR法による解析も行っていたが、結果にばらつきがあり信頼性のあるデータを得るには至らなかった。一方でPCR-SSCP法による解析はin vitro transcroptionによって合成した鋳型を用いた条件検討においても、鋳型DNA中のSNPの存在比に比例してSSCPのピークが出現することを確認できており、得られた定量データの信頼性は高いと考えている。またPCR-SSCP法ではAEDのみならず遺伝子増幅や欠失も検出可能であり、今後他の研究にも応用可能な実験系を構築できたと考えており、平成23年度の目標はおおむね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
AEDの認められた子宮体癌患者由来の検体における、MDM2のタンパクレベルの発現には明らかな差がないことをウエスタンブロット法で確認しており、当初の目的であった「AEDによる子宮体癌発生の分子機構の解明」には直接結びつかない可能性があることは否定できないが、がんの進展や悪性度の違いなど、がんの性質に関わる分子機構の解明にはつながる可能性はあるのではないかと考えている。またMDM2遺伝子におけるAEDは同じSNPを有する検体間でも必ず認められるものではないことから、SNPの相違そのものに由来するというよりはエピジェネティックな因子の関与が強く疑われる。今後は以下のようにAEDが生じる分子機構についての解析を進めていく予定である。われわれはMDM2 P2プロモーター上のSNP309より5’側に存在するSp1結合配列がNF-kBの結合配列に変わるSNPが存在することを確認している。この部位にNF-kBが結合するか否かによりMDM2 P2プロモーターからの転写量に違いが生じることを明らかにするために、Chromatin Immunoprecipitation法(ChIP assay)、EMSA法を用いて同部位にNF-kBが結合することを確認する。またこのNF-kBの結合がMDM2の転写量へ与える影響を評価するために、Luciferase assay、Real-time PCR法によりアリル間の発現量の差を評価する。また臨床検体を用いてAED(+)の組織においてNF-kBの核内への局在を証明するために免疫組織化学染色法を用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬購入(プライマー、抗体、血清など)平成23年度に生じた次年度使用額4,209円について、これは平成23年度に必要とする試薬等購入後に生じた残額であり、平成24年度にプラスチックウェアなどの購入に使用する予定である。学会発表旅費など
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