2011 Fiscal Year Research-status Report
動物モデルを用いた妊娠高血圧症候群の重症化の機序解明と治療に関する研究
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23791848
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山本 珠生 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20405210)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧症候群 / 血管内皮機能障害 / 胎盤形成不全 / 一酸化窒素 / 活性酸素 |
Research Abstract |
PIH (妊娠高血圧症候群) は、高血圧を主症状とする症候群で、これまでPIHに関する多くの病因・病態研究がおこなわれてきたが、未だ不明な点が多い。血液凝固異常も発生していることから血管内皮機能障害が病態形成の中心とされている。妊娠高血圧症候群 (PIH) 妊婦より得た抵抗血管を用いた実験より得た血管内皮機能の異常に着目した。ニトログリセリン長期慢性投与動物実験での血管内皮機能異常にみられるuncoupling現象、L-アルギニン+葉酸の急性投与がuncouplingを改善するとの知見をベースに、最近のPIHの病因形成仮説である胎盤形成不全による高血圧を誘導した動物モデルを用いて、PIHの血管内皮細胞障害のunderlying mechanismの解明を確立するための研究を目的とした。 妊娠ラットに、胎盤形成期に、NO合成酵素阻害薬であるL-NAMEを浸透圧ポンプを用いて皮下持続投与し、胎盤形成不全を発症したPIHモデル動物を作成した (L-NAME投与群)。妊娠期間中、無加温型非観血式血圧計を用いた血圧測定、尿蛋白量測定を行った。妊娠20日に、麻酔下に子宮を摘出し、胎仔・胎盤重量を測定し、子宮内胎仔発育を評価した。胎盤免疫染色によりトロホブラストの子宮らせん動脈への侵入不全を観察した。 胎児重量、胎盤重量はL-NAME投与群で減少していた。胎盤標本のサイトケラチン染色では、Control群において、脱落膜内血管へトロホブラストが侵入し、内腔が拡張していた。一方、L-NAME投与群では、脱落膜内の血管へのトロホブラスト侵入は少なく、血管内腔の拡張が認められなかった。胎盤形成期のL-NAME投与は、胎盤形成不全による胎仔発育不全を発症するとともに血圧が上昇することから胎盤機能不全による血管トーヌスの増加を惹起したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今後、葉酸・L-アルギニンを用いた妊娠高血圧症候群の治療への応用をすすめていくにあたり、これまでに行ってきた臨床研究との整合性をはかることが必要と考え、データの検討を優先して行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
L-NAME投与群にL-アルギニン1g/日、葉酸0.4mg/日併用投与した群を作成する。摘出した血管の内皮細胞内のNOや活性酸素種産生を測定し、血管内皮機能障害、eNOSのuncouplingに対する改善効果を検討する。子宮動脈内皮温存標本を用いて等尺性収縮・弛緩反応を測定し、生体内内皮刺激物質であるアセチルコリン (ACh) やNOドナー、プロスタサイクリン疑似薬による弛緩反応性について検討を行う。さらに、cGMP、cAMP、ProteinkineseC活性化薬、Rho kinase阻害薬によりセカンドメッセンジャーの反応性やCa2+感受性の変化を解明する。血管組織中のL-アルギニンおよびeNOSの補酵素であるBH4濃度を測定し、葉酸・L-アルギニンの補充作用のメカニズムを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下について、研究費の使用を予定している。・実験動物の購入・血管標本の収縮・弛緩反応測定のため、張力測定装置の購入・実験器具・試薬の購入・旅費(研究成果の学会発表)
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Research Products
(6 results)