2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト子宮内膜の生理機能および病態形成における上皮間葉転換の関与
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23791853
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古谷 正敬 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70317197)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / 上皮間葉転換 |
Research Abstract |
子宮内膜細胞の上皮間葉転換と子宮内膜症発症の関連の基礎研究をおこなった。子宮内膜症病巣細胞より細胞を取り出し、培養を行った。卵巣に発症した子宮内膜症病巣を切除し、細胞をコラゲナーゼにて処理をおこなったところ、子宮内膜症病巣初代培養細胞をえることができた。形態的にほとんどが繊維芽細胞様の間質細胞と考えられた。TGFベータと拮抗して働くと報告されているBMP7を上記培養細胞に添加し、上皮間葉転換に関与する分子のタンパクレベルでの発現変化をウエスタンブロットにて調べた。BMP7濃度を10ng/mlから1000ng/mlまで変化させて加えたところ濃度依存性にNカドヘリンの発現が上昇することが判明した。このことからカドヘリンの発現という形で内膜症の病巣細胞が間葉の細胞から上皮の細胞へと性質を変えようとしていることが推測された。BMP7が子宮内膜症病巣細胞のもつ間葉の性質を上皮の性質に変える一因子となることが示唆された。さらにわずかではあるがEカドヘリンの発現も濃度依存的に上昇することがわかった。このことも上記のBMP7が間葉の性質を上皮の性質に変える可能性を支持するものと考えられた。また細胞の接着に関与するフィブロネクチンの発現は濃度依存的ではないもののBMP7を加えることで増強した。子宮内膜上皮細胞に対してBMP7の添加のうむにより細胞接着能を比較したところ、BMP7添加細胞では細胞の接着能が低下する傾向がみられた。これらのことからBMP7が細胞接着能という間葉の性質を抑える可能性が支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内膜症病巣細胞の培養系が確立したことやBMP7の添加実験によりほぼ予想通りの結果が得られていることから研究は順調に進んでいると考えている。ただし、子宮内膜細胞の培養に関しては既報のプロトコールに準じて試みたところ細胞の増殖がわるく培養条件が整っていない。これに関しては予定に後れをとっておりさらなる培養条件の調整を進めていかなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
BMP7添加による子宮内膜症病巣細胞への効果がみられた。この結果をもとにカドヘリン発現の調節機構についてさらなる解析を進める。特にカドヘリンの発現調節因子であるZEB1の発現変化について定量PCRやウエスタンブロットにて解析を行う。子宮内膜上皮の間葉転換についても研究を進める。子宮内膜上皮細胞の培養に関してはいまだ確立していないが3次元培養やEGFの添加により培養が可能との報告もあり試みる。培養系の確立ののちはTGFベーターや子宮内膜症患者腹水の添加が上皮細胞の性質を間葉に傾けるか、間葉細胞の関連分子の発現変化を解析する。来年度予定している移植実験について予備実験として子宮内膜症モデルマウスの作成を試みる。2つの方法を試みる予定であり、ひとつは内膜症病巣組織の腹腔内移植、もう一つは子宮内膜症病巣細胞の腎被膜下移植である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養に主たる研究費を費やすこととなる。3次元培養に必要なマトリゲルや培養液中への添加因子TGFやBMP7の購入が必要。ウエスタンブロット解析、遺伝子発現解析のために試薬を購入する。研究データー蓄積のために必要な記録装置をコンピューター関連消耗品として購入する。子宮内膜症研究の情報収集および本研究の成果発表として国内の学会に参加する。なお平成23年度未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)