2011 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティックスな調節に基づく子宮頸部腫瘍の病態解明アプローチ
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23791855
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村上 功 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70445237)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヒトパピローマウイルス / メチル化 / エピジェネティックス |
Research Abstract |
平成23年度は、日本で感染者の多いHPV16型・18型・52型・58型に感染した臨床検体のメチル化頻度やパターン、HPVゲノムのクロマチン構造の変化と宿主細胞の分化、子宮頸部病変の関連の解析を実験計画とした。 具体的には、MethPrimer Design programを用い各々のHPV型の E6遺伝子、L1遺伝子、LCR領域を網羅するプライマーを設計した。設計したプライマーを用いてPCR増幅、シーケンスを施行し各々のCpGサイトのメチル化の有無に関して検討を行った。また、未分化・分化状態のHPV16型感染細胞 (W12細胞) とHPV31型感染細胞 (CIN612細胞) を培養し、採取したHPVゲノムDNAからモノヌクレオソームDNAを回収した。リアルタイムPCRで定量しヌクレオソーム結合部位を決定した。 HPV16型・52型でE6遺伝子、LCR領域でメチル化が認められなかったのに対し、L1遺伝子では高率にメチル化が認められた。さらにL1遺伝子のメチル化頻度と病変の進行度に関連が認められた。また、無治療のcervical intraepithelial neoplasia 1 (CIN1)・2 (CIN2) 症例のメチル化頻度と予後を検討したところ、両者の間に関連が認められた。 また、W12細胞・CIN612細胞では、分化に伴いウイルスゲノムメチル化に関与するヌクレオソーム結合部位とメチル化頻度に変化が認められた。 L1遺伝子のメチル化頻度と病変の進行度、予後の間に関連が認められ、さらにこの関連性はHPVの型に共通な現象であった。L1遺伝子のメチル化頻度は子宮頸部腫瘍の診断的バイオマーカーとしてだけではなく予後バイオマーカーとしても有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実験計画の内、HPV16型・52型のメチル化解析を終了し、実験結果を国際学会で報告している。58型に関しては、現在実験が進行中である。また、W12細胞・CIN612細胞を用いて、宿主細胞の分化に伴いHPVのウイルスゲノムクロマチン構造・メチル化頻度の変化することを見出した。 以上の経過より、平成23年度の実験計画の大部分は順調に進展し結果が得られていると考えられる。平成23年度の経過より、平成24年度の実験計画を無理なく実行することが可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はHPV58型のメチル化頻度の解析を行う。具体的にはすでに設計・注文しているプライマーを用いて、PCR増幅、シーケンスを施行し各々のCpGサイトのメチル化の有無に関して検討を行う。平成23年度に得られた結果とHPV58型のメチル化頻度と臨床情報の関連性より子宮頸部腫瘍のバイオマーカーとして有用か検討する。 また、当初の実験計画通り子宮頚腟部における炎症および腫瘍性病変におけるメチル化関連遺伝子異常の解析を行う。具体的な方法は、膣内に分泌されているサイトカイン・ケモカインを網羅的にMultiplex Immunoassay法にてIL-1β,-2,-4,-5,-6,-7,-8,-10,-12,-13,-17,G-CSF,GM-CSF,INF-γ,MCP-1,MIP-1β,TNF-αを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。 平成24年度は「今後の研究の推進方策」に記述した実験を遂行するため、HPV58型の E6遺伝子、L1遺伝子、LCR領域のPCR増幅、シーケンスを施行するための試薬・消耗品・共通機器使用に研究費を使用する。また、膣内に分泌されているサイトカイン・ケモカインを解析するためのMultiplex Immunoassay法に研究費を使用する。 また、国際学会・国内学会発表を精力的に行うと共に現在準備中の論文を投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)