2011 Fiscal Year Research-status Report
胎盤特異的転写因子GCMa/1の機能制御におけるPKCの役割の解明
Project/Area Number |
23791858
|
Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
安井 裕子 金城学院大学, 薬学部, 助教 (80434554)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | GCMa/GCM1 / 胎盤 / 転写因子 |
Research Abstract |
GCMa/1は胎盤において栄養膜幹細胞から合胞体栄養膜細胞への分化の制御に関与していることが知られている。PKC依存的なシグナルがこの分化過程を促進させる可能性が報告されているが、このシグナルがGCMa/1の制御にどのように関与しているかについてはこれまで報告がなかった。そこで本研究では胎盤特異的転写因子GCMa/1の機能制御メカニズムにおけるPKC依存的シグナルの役割の解明を目的とした。PKC依存的なシグナルがGCMa/1にどのような影響を及ぼすかについて調べるため、PKC活性化剤であるPMAを用いて、GCMa/1を内在性に発現するJEG-3細胞においてGCMa/1の発現量の変化を調べたところ、PMA処理によって一過性に減少することがわかった。このメカニズムを調べるため、このときのGCMa/1のmRNA量の変化と分解系への影響を調べたところ、mRNA量は時間経過に伴い減少する傾向が見られた。一方、分解系においてはPMA処理によってGCMa/1の発現量の減少が促進されることが明らかとなった。これまでにGCMa/1の分解がGCMa/1のリン酸化により促進されるという報告があることから、PKC依存的なシグナルがGCMa/1のリン酸化を促進しているかどうか調べたところ、PKCおよびMEK/ERK依存的なシグナルによりGCMa/1の328番目、378番目、383番目のセリン残基のリン酸化が促進されることが明らかとなった。これまでの結果から、PKC依存的なシグナルはGCMa/1のmRNA量を減少させる、またGCMa/1のリン酸化を促進することにより分解を促進し、GCMa/1の一過的な発現量の減少をもたらしていることが示唆された。しかし、長時間ではコントロールと同じレベルに回復することから、mRNA量と発現量が単純な正の相関でなく、その他の要因も関係している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に研究実施計画に示した項目に関して、1)PKCによるGCMa/1発現制御メカニズムの解明について、PKC依存的シグナルの活性化により発現量が一過性に減少し、そのメカニズムがmRNA量の減少および分解系の促進にあることを見いだした。mRNA量がなぜ減少するのか、発現量の減少がなぜ一過性なのか、詳細なメカニズムについて今後さらに検討が必要であるが、PKC依存的シグナルがGCMa/1の発現に及ぼす影響について新規のデータが得られたので、進展があったと言える。次に、2)PKCによるGCMa/1リン酸化の機能解析、および3)PKCによるGCMa/1リン酸化部位の同定について、GCMa/1のリン酸化に関わるPKCおよびその他のシグナル分子を同定し、GCMa/1上のアミノ酸残基を同定した。また、これらのアミノ酸残基におけるリン酸化がGCMa/1の分解機構に関与している可能性を見いだし、当初の目的を達成できたと考える。また、平成24年度に計画しているPKCシグナルの下流分子の同定についても、PKCの下流でMEK/ERK経路が重要であることを明らかにしており、今後の計画に向けて順調に進行している。4)PKCサブタイプの同定においては、PKCα、PKCβII、PKCεの発現について確認したが、GCMa/1への関与については調べられていない。しかし、これまでに得られた結果では、PKCはその下流のシグナル経路を活性化することによりGCMa/1の制御に関与していることが明らかとなっており、GCMa/1に直接相互作用するような分子の探索も同時に行っていくことが重要であると考えている。全体を通して設定した目的に対して新規の知見が得られ、来年度の計画についても検討を進めていることから、本研究計画は順調に進行していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、PKC依存的なシグナルがGCMa/1のリン酸化を促進し、発現制御に関与していることが明らかとなってきた。しかし、これらがどのようにGCMa/1のmRNA量を減少させるのか、分解系を促進しているのか、またそこでGCMa/1のリン酸化がどのような役割を持っているのか、これらの詳細なメカニズムは不明である。そこでどのような細胞外刺激や生理条件によってこの経路が活性化されるのか、またGCMa/1のリン酸化がGCMa/1の制御において何に影響を及ぼしているのか検討する。また、GCMa/1をリン酸化するキナーゼは明らかになっておらず、これについても同定を試みる予定である。さらに、リン酸化を含めた翻訳後修飾が転写因子の転写活性化能の調節に関与しているという報告は様々あり、PKC依存的なシグナルによるGCMa/1のリン酸化が転写活性化能に対してどのような影響を及ぼしているか検討する予定である。GCMa/1は胎盤の合胞体栄養膜細胞に特異的に発現しており、栄養膜幹細胞から分化してくる段階に必須の因子であると考えられている。そこで、PKC依存的なシグナルがもたらすGCMa/1に対する影響が、栄養膜細胞においてどのような機能を持つのか、特に分化に対する作用について調べる。また、胎盤の発達段階でGCMa/1の発現が変化することが示唆されているが、このときGCMa/1のリン酸化やPKC依存的シグナルの活性がどのように変化しているのか、各妊娠週齢のマウスを用いて検討する。全体を通して、生体内でPKCの関わるGCMa/1の制御がどのように活性化され細胞機能に影響しているか明らかにすることを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画は順調に進んでおり、当初の計画どおり実験に必要な消耗品費と論文投稿および学会発表にかかる費用に使用する予定である。
|