2011 Fiscal Year Research-status Report
中咽頭癌におけるマイクロRNA解析による新規バイオマーカーの探索
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23791867
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水町 貴諭 北海道大学, 大学病院, 助教 (00507577)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中咽頭癌 / HPV / geldanamycin / HSP90 / 個別化治療 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
平成23年度はHPV陽性中咽頭癌の臨床像をまとめ、研究成果を報告した。HPV陽性中咽頭癌は陰性例に比べて放射線治療や化学療法の感受性が良好であるとされているが、HPV陽性であっても放射線治療や化学療法に対して再発する症例もあることを報告した。欧米ではHPV陽性中咽頭癌は予後が良好なので治療強度を下げる、"less intensive therapy"を行う方向にあるが、欧米の症例と日本人の症例では臨床像が異なる場合もあり、現時点で日本人のHPV陽性中咽頭癌に対して"less intensive therapy"を行うのは時期早尚であることを第35回日本頭頸部癌学会および第24回日本口腔・咽頭科学会にて報告し、その内容について学会誌「頭頸部癌」に投稿した。予後が良好であるとされているHPV陽性中咽頭癌のなかにも予後不良例が存在することから、治療開始前の評価にてこれらをスクリーニングできれば、予後良好例には治療強度を下げ副作用の軽減をはかることができ、予後不良例には治療強度を高めるという個別化治療を行うことが可能となる。そのためには予後を左右する分子生物学的マーカーの探索が求められる。そこで、HPV陽性/陰性細胞株間での遺伝子発現の差異を検討しHPV陽性癌に特異的に感受性を持つ薬剤を検索を行った。cDNAマイクロアレイにてHPV陽性株/陰性株間における遺伝子発現の比較を比較しConnecting MapにてHPV陽性癌に特異的に作用する薬剤を検索したところHSP90阻害薬であるgeldanamycinが挙げられた。HPV陽性、陰性細胞株をgeldanamycinで処理したところ、HPV陽性細胞株の方がgeldanamycinの感受性が良好であった。したがってHSP90阻害薬がHPV陽性細胞株に対する新たな戦略的薬剤となり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床の面ではHPV陽性中咽頭癌の臨床像をまとめ、基礎的にはHPV陽性/陰性細胞株間での遺伝子発現の差異を検討しHSP90阻害薬がHPV陽性細胞株に対する新たな戦略的薬剤となり得る可能性を見い出すことができ、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は中咽頭癌の個別化治療を行うことができるように分子生物学的手法を用いて解析を進めてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き中咽頭癌組織を用いたマイクロRNA発現プロファイルの解析、シスプラチン感受性―耐性細胞間のマイクロRNA発現差異の解析およびドセタキセル感受性―耐性細胞間のマイクロRNA発現差異の解析を行う。得られた結果を基に、中咽頭癌症例の治療効果、再発予測に関わるマイクロRNA発現パターンの検討および新規バイオマーカーの同定を行う。具体的には(1)中咽頭癌治療前標本を用いてマイクロRNAプロファイルの解析 (2)前記にて行った手術治癒群―再発群、放射線治療治癒群―再発群、化学療法治癒群―再発群でのマイクロRNA発現パターンと臨床病理学的因子との関連を検討することにより、実際の中咽頭癌症例においてその発現パターンが予後予測に有用であるか明らかにする。(3)特定のマイクロRNA発現プロファイルにより発現調節を受ける可能性のある遺伝子発現をmRNAレベルまたはタンパク質レベルで検討し、予後、放射線感受性、化学療法感受性を決定する新規因子の同定を試みる。マイクロRNA用逆転写プライマーセット、PCR試薬の購入や国内海外において当該研究についての情報収集、成果発表をおこなう。23年度は当初の予定より消耗品の使用が少なく済んだため未使用額が生じたが、引き続きおこなう解析処理に必要な専用ソフトや、試薬を購入予定である。
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