2011 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病が内耳の加齢変化に与える影響とそのメカニズムの解明
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23791896
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤田 岳 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 医学研究員 (90533711)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
我々は糖尿病による加齢性難聴への影響を調べるために、まず糖尿病モデルマウスを作成した。C57BL/6Jマウス8週齢オスを用いた。30匹をランダムに2群に分け、コントロール群 n=15, 1型糖尿病モデル群 n=15 。メスはエストロゲンが食事による肥満に影響を与えることから今回はオスのみを使用した。1型糖尿病モデル群はストレプトゾトシン(STZ)を100mg/kg body weight腹腔内に2日連続で投与した。コントロール群へは生理食塩水0.2mlを2日連続腹腔内に投与した。それぞれの群で投与開始から1ヶ月、3ヶ月、5ヶ月まで n=5ずつ飼育し、血糖、体重、聴力を測定した後に蝸牛を摘出した。聴力閾値変化の測定にはABR (Auditory brainstem Response)を用いた。刺激音には4, 8,16,32kHzのトーンバースト音を用い、刺激音を5dBステップとし、256回加算した。1型糖尿病モデル群の平均血糖値は、ストレプトゾトシン投与後1ヶ月392mg/dl、3ヶ月540mg/dlであり、コントロール群の122mg/dl、109mg/dlと比べて有意に上昇していた。糖尿病モデルマウスの作成は安定して可能となた。次に聴力閾値の検査では、糖尿病モデル作製後1ヶ月の時点では4kHzにおいて1型糖尿病モデルでコントロール群と比べ平均6.3dBの閾値上昇を認めたが、その他の時期及びその他の周波数では聴力閾値に有意差を認めなかった。このことから、5ヶ月までの時点では糖尿病そのものは加齢性難聴に対して大きな影響を与えていないと考えられた。しかし、5ヶ月モデルに強大音響を曝露したところ、コントロールよりも糖尿病群では内耳障害からの回復に遅れがみられた。また形態的にラセン神経節細胞の減少を認めた。これらより糖尿病の内耳では音響に対する易受傷性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的のうち、以下の1)1型、2型糖尿病モデルマウスを作製し、ABRを測定してコントロール群と聴力経過を比較、2) 強大音響負荷後に聴力を測定し、音響外傷に対する糖尿病モデルの内耳易受傷性を検討、3) 1)、2)における蝸牛血流の変化を検討、4)マウス内耳を摘出して糖尿病と加齢による障害部位を形態学的に検討の4項目について順調に達成できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでのデータをふまえて、他臓器の糖尿病合併症治療に用いられる薬剤を投与し糖尿病による内耳障害への治療効果を検討を試みる。例えばアルドース還元酵素阻害薬(高血糖時に亢進するポリオール代謝を阻害し、同時に抗酸化ストレス作用も有する糖尿病末梢神経障害の治療薬)などを投与する。さらに得られているデータに基づき、論文執筆や、学会を通じて成果を発表していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、現在の研究をさらに進めるために実験動物(マウス)の購入、飼育、組織観察のための各種試薬の購入に研究費を用いる。また成果を発表するための、論文執筆や学会発表にも研究費を使用させていただく予定。
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