2012 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病が内耳の加齢変化に与える影響とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
23791896
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤田 岳 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 医学研究員 (90533711)
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Keywords | 糖尿病 / 音響外傷 / 難聴 / 内耳 |
Research Abstract |
我々は糖尿病による加齢性難聴への影響を調べるために、糖尿病モデルマウスを作成した。C57BL/6Jマウス8週齢オスを用いて、ランダムに2群に分け、コントロール群と1型糖尿病モデル群を設定して実験を行った。1型糖尿病モデル群は膵臓のβ細胞を障害するストレプトゾトシン(STZ)を投与し作成した。それぞれの群で投与開始から1ヶ月、3ヶ月、5ヶ月まで飼育するグループに分けて観察し、血糖、体重、聴力を測定した後に蝸牛を摘出した。聴力閾値変化の測定にはABR (Auditory brainstem Response)を 用いた。刺激音には4, 8,16,32kHzのトーンバースト音を用い、刺激音を5dBステップとし、256回加算した。 1型糖尿病モデル群の平均血糖値は、ストレプトゾトシン投与後1ヶ月392mg/dl、3ヶ月540mg/dlであり、コントロール群の122mg/dl 、109mg/dlと比べて有意に上昇していた。糖尿病モデルマウスの作成は安定していた。次に聴力閾値の検査では、糖尿病モデル 作製後1ヶ月、3ヶ月、5ヶ月いずれの時点でも聴力閾値の変化に、いずれの周波数でも2群の間で有意な差は認められなかった。このことから、5ヶ月までの時点では糖尿病そのものは加齢性難聴に対して大きな影響を与えていないと考えられた。しかし、5ヶ月 モデルに強大音響を曝露したところ、コントロールよりも糖尿病群では音響障害からの聴力回復に遅れがみられた。また形態的にラセン神経節細胞の減少を有意に認め、蝸牛の血流低下も認められた。これらより糖尿病の内耳では音響に対する易受傷性があると考えられた。この研究により、糖尿病患者の内耳は健常者よりも脆弱である可能性が示唆された。この結果はこれまでの臨床研究の報告と合致しており、今後の予防や治療への足がかりとなり得るものである。
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