2011 Fiscal Year Research-status Report
経口免疫寛容剤を用いたスギ花粉症に対する減感作治療の検討
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23791905
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村上 大輔 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80568965)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 新規経口免疫療法 / スギ抗原-ガラクトマンナン複合体 / 経口免疫寛容 / スギ花粉症 |
Research Abstract |
2011年度は、20歳以上の成人に対してオープン試験を行った。スギ花粉症蛋白-ガラクトマンナンを用いた新規経口免疫療法治療希望者26名のうち基準に当てはまる、スギ花粉症患者24名に対して経口免疫療法を行い、花粉症患者で免疫治療を受けない薬物治療群10名と比較することでその臨床効果、治療の安全性、免疫学的検討を行った。経口免疫療法は、経口免疫寛容剤であるスギ花粉症蛋白(Cryj1:175μg)-ガラクトマンナンカプセル 4Cap 2×/日をスギ花粉飛散時期より約1ヶ月前(2010年1月初旬)より30日間連続で内服投与を行った。その結果、わずか1か月の免疫治療であったが花粉飛散期におけるTotal symptom-medication score、VASは、経口免疫治療群で有意に改善し、QOLスコアも花粉飛散後期の一部期間で有意な改善を認め、スギ花粉症に対するスギ花粉症蛋白-ガラクトマンナンを用いた経口免疫療法が有効であることを明らかにした。また、減感作中の有害事象(CTCAEに基づいて評価)については、grade1(20%), grade2(8%)の有害事象を認めたが重篤な有害事象であるgrade3以上の有害事象は認めず、安全な治療法であることが示唆された。さらに免疫療法の免疫学的有効性(免疫寛容の誘導)を示す指標である抗原特異的IgG4、制御性T細胞などから産生されるIL-10について検討したところ免疫治療後より経口免疫治療群において血清中抗原特異的IgG4の上昇と、PBMCからのIL-10産生の増加が認められ、花粉飛散期を過ぎてもその効果が持続することが確認された。以上の結果よりスギ抗原-ガラクトマンナン複合体を用いた新規経口免疫療法は早期に、安全に免疫寛容を誘導し、スギ花粉症状を改善することが可能でスギ花粉症治療の選択肢の一つになりえることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度、当初の予定通り新規経口免疫寛容剤であるスギ花粉症蛋白-ガラクトマンナンを用いてスギ花粉症患者に対してオープン試験を行い、経口免疫療法の有効性と安全性を明らかにした。さらに花粉飛散期前に短期間の経口免疫療法を行うことで免疫学的有効性(免疫寛容の誘導)を示す指標である血清中の抗原特異的IgG4の上昇と、PBMCからのIL-10産生の増加を確認し、経口免疫治療後も花粉飛散期終了後までその効果が持続することを明らかにした。またこれらの研究成果について2011年第50回日本鼻科学会、2012年第30回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会において学会発表を行った。今後さらに研究成果をまとめ論文発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、さらに人数を増やして新規経口免疫寛容剤であるスギ花粉症蛋白-ガラクトマンナンを用いてスギ花粉症患者に対するオープン試験を行い、新規経口免疫寛容剤の治療効果、安全性、免疫反応を検討する。さらに2012年度は、経口免疫療法1年目の患者と2010年度より引き続いて免疫療法を受ける免疫療法2年目患者を比較することでその治療効果の比較を行い、免疫療法を複数年行うことで治療効果が高まるかどうかを検討する。またさらに2011年度の結果からヒトにおいて短期間に(わずか1か月で)スギ花粉症の経口免疫寛容が誘導できることが明らかになったことは、腸管の免疫寛容について研究するための動物モデルにおいても応用可能であることを示している。つまり、従来からあるスギ花粉症マウスモデルにこの新しい経口免疫寛容剤を用いることでヒトと同様に短期間に免疫寛容を誘導できることを実証すればヒトでは解析しにくい腸管での免疫寛容の機序をあきらかにするための新しいマウスモデルとなり、非常に有用である。そこで2012年度は臨床試験と並行して新規経口免疫寛容剤を用い、スギ花粉症マウスモデルに対して経口免疫寛容が誘導できるかを並行して検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度の臨床試験、スギ花粉症に対する新規経口免疫治療薬を用いたオープン試験(期間:2011年1月から5月)は、研究費が助成される前より予定していた研究で、2011年度1月よりスタートし、研究費助成が決定した4月以前にその費用の大部分は私費にて負担した。2011年度の研究費より繰り越しした次年度(2012年度)に使用する予定の研究費は、2012年度の花粉症臨床研究(2012年1月よりすでにスタートしており、2012年5月に終了する予定。)に対して使用し、臨床研究終了後の2012年5月以降に研究協力者への研究協力金、データ解析のため人件費、一部検査項目について検体の分析を行う外部検査機関への支出があるためその支払いに充てる予定である。2012年度分の予算については、2013年度の研究費の予算が少ないため2013年度1月から5月における臨床研究に対する研究協力者への研究協力金、外部検査機関への支払いに60万円程度繰り越す予定である。残りの予算に関しては研究成果発表目的での学会発表の旅費に20万円、データ解析のため人件費に10万円、動物実験のための物品費に40万を予定している。
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