2011 Fiscal Year Research-status Report
真珠腫性中耳炎に対する免疫療法の開発:新モデル開発
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23791906
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
福田 智美 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40372776)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 真珠腫性中耳炎 / KGF / KGFR |
Research Abstract |
真珠腫性中耳炎は、他の中耳炎とは異なり隣接する骨組織を破壊し、時に中耳腔内から頭蓋底へと進展して、脳膿瘍などの致命的合併症をも引き起こす、腫瘍にも似た難治性中耳炎である。その組織は、増殖能、新陳代謝が異常に亢進した皮膚組織と炎症細胞が多数浸潤している皮下肉芽組織から構成される。中耳組織は単層粘膜上皮で構成されており、重層扁平上皮は存在しない為、外耳道や鼓膜由来の重層扁平上皮細胞の異常増殖、中耳腔への進展が主な病因と考えられている。我々はヒト真珠腫組織で、角化細胞増殖因子(KGF)/受容体(KGFR)の発現が真珠腫再発率に有意に関係しているデータを示し、KGF/KGFRのパラクライン機構が真珠腫形成に強く関与しているとした。KGFは通常皮膚損傷時の治癒期に発現し、上皮が正常化すると発現が抑制される。ヒト真珠腫組織では繰り返す炎症と共に肉芽が大量に発現し、様々なサイトカインと共にKGFが常に強発現している。これが鼓膜陥凹から増殖する真珠腫への進展やひいては骨破壊を引き起こす重要なトリガーの一つとなっている。このKGF/KGFRのパラクライン機構を抑制できれば真珠腫性中耳炎の増殖を抑制できるであろう。我々は新動物モデルを作成し、中耳真珠腫形成へのKGFの関与について検討した。SDラットを麻酔の後、pEYFP-Mitoベクターを使用しエレクトロポレーションの至適条件を決定し、その至適条件下で外耳道細胞内にKGFプラスミド、IL-1αプラスミドもしくは空ベクターを導入し、各々の蛋白を強制発現させ、実験的真珠腫の発症の有無を検討した。結果、KGFプラスミド導入群では真珠腫形成が認められ、IL-1αプラスミド導入群では炎症所見は認めるのみで真珠腫形成は認めず、空ベクター群の外耳道所見は正常所見であった。今回の実験結果はKGFの強発現が真珠腫組織を誘発する可能性を示唆するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに実験が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
投与実験:実験的真珠腫に抗体・ペプチドの緩和・拮抗作用を利用し形成抑制もしくは消失を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
エレクトロポレーション用プローブ換え針、実験動物、PCR用試薬・チップ等、ウエスタンブロット用試薬等、免疫染色用試薬等、In situ hybridization用試薬等、抗体、動物飼料、実験用消耗品(手袋、ガウン等)、実験用薬品(麻酔、消毒)、計算機消耗品(CD,DVD等)、論文別刷、研究成果発表のための旅費交通費に使用予定である。
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