2012 Fiscal Year Annual Research Report
真珠腫性中耳炎に対する免疫療法の開発:新モデル開発
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23791906
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
福田 智美 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (40372776)
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Keywords | 真珠腫性中耳炎 / KGF / KGFR |
Research Abstract |
真珠腫性中耳炎は脳膿瘍等の致命的合併症を引き起こす難治性中耳炎であり、外耳道や鼓膜由来の重層扁平上皮細胞の異常増殖、中耳腔への進展が主な病因と考えられている。上皮異常増殖には様々なサイトカインが関与しているという報告がある。 我々はヒト真珠腫組織で角化細胞増殖因子(KGF)/受容体(KGFR)の発現が真珠腫再発率に有意に関係しているデータを示し、KGF/KGFRのパラクライン機構が真珠腫形成に強く関与しているとした。KGFは通常皮膚損傷時の治癒期に発現し、上皮が正常化すると発現が抑制される。KGFは本来角化上皮の増殖を促し、創傷治癒を促進する因子である。ヒト真珠腫組織では繰り返す炎症と共に肉芽が大量に発現し様々なサイトカインと共にKGFが常に強発現している。これが鼓膜陥凹から増殖する真珠腫への進展、骨破壊を引き起こす重要なトリガーの一つとなっている。従ってKGF/KGFRのパラクライン機構を抑制できれば真珠腫性中耳炎の増殖を抑制できると考えた。 今回我々は新動物モデルを作成し、中耳真珠腫形成へのKGFの関与について検討した。 SDラットを麻酔の後、pEYFP-Mitoベクターを使用しエレクトロポレーションの至適条件を決定した。至適条件下で外耳道細胞内にKGFプラスミド、IL-1αプラスミド、空ベクターを導入し、各々の蛋白を強制発現させ、実験的真珠腫の発症の有無を比較検討した。結果KGFプラスミド導入群では真珠腫形成が認められた。IL-1αプラスミド導入群では炎症所見は認めるのみで真珠腫形成は認めず、空ベクター群の外耳道所見は正常所見であった。 今回エレクトロポレーション法を用いた新奇動物モデルで中耳真珠腫形成へのKGF作用の重要性が示された。そこで本新奇動物モデルを用いKGF受容体阻害剤による阻害実験を行った。 結果真珠腫形成が100%阻害され、保存療法への応用の可能性が示唆された。
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