2011 Fiscal Year Research-status Report
上気道粘膜上皮におけるウイルス認識受容体を介した生体防御機構の検討
Project/Area Number |
23791916
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
大國 毅 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40464490)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 鼻粘膜 / 上皮 / ウイルス / 生体防御 / 上気道 |
Research Abstract |
呼吸器系ウイルスは気道上皮細胞に感染・複製し、気道炎症を惹起する。これらに対抗するため宿主にはあらかじめ備わっており感染後早期に反応する自然免疫、感染後に成立する獲得免疫、この二つの免疫システムがある。病原体を非自己と認識するパターン認識受容体は、自然免疫において主要な役割を果たしている。パターン認識受容体のうち、宿主細胞外に存在する病原体を感知するToll like receptorがこれまで主に研究されてきた。しかし最近、宿主細胞内の病原体を感知するセンサーが存在することがわかり注目されている。 また病原体感染前よりこれらの侵入を防いでいる、"上皮バリア(タイト結合)"も自然免疫の一端を担っている。これは細胞間接着装置の一つで、細胞間隙の最も頂部側にあり、細胞間隙の物質透過を厳重に制限するバリア機能、細胞膜頂部側と基底部側の物質の極性を保つフェンス機能を有している。上皮バリアとパターン認識受容体の関連性について徐々に明らかとなってきているが、上気道についてはいまだ不明である。 本研究では、ヒト鼻粘膜上皮細胞を用いて、パターン認識受容体リガンド処置およびウイルス感染時における自然免疫応答について明らかとすることを目的とした。 正常ヒト鼻粘膜上皮細胞において、リガンド処置および呼吸器系ウイルス感染により、上皮バリア(タイト結合)の発現・局在が変化し、炎症性サイトカイン産生を誘導された。またこれらに関わるシグナル分子の一部が本研究で明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パターン認識受容体リガンド処置および呼吸器ウイルス感染時に、正常ヒト鼻粘膜上皮細胞における上皮バリア(タイト結合)の変化、および正産生されるサイトカイン、ケモカインの一部が明らかとなったこと、またこれらに関わるシグナル分子についても解析がすすんだため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1ウイルス感染系の確立と細胞内ウイルスセンサーの発現の確認)手術で得られた下鼻甲介粘膜より鼻粘膜上皮細胞を分離培養し、さらにhTERTを遺伝子導入して、延命化した細胞を確立し用いる。各種ウイルス(RSV、紫外線照射したRSV)を MOI 1で感染させ、ウイルス増殖性各種実験にて確認する。(2.ケモカイン、サイトカイン、サイトカイン誘導遺伝子の確認)リガンド処置時、ウイルス感染時のヒト鼻粘膜上皮細胞から産生されるケモカイン、サイトカインについて遺伝子発現の増加を網羅的に検討する。(3.インターフェロンの解析)ウイルス感染時のインターフェロン産生についてメッセージレベルおよび蛋白レベルで確認する。またインターフェロン産生に関わるパターン認識受容体、シグナル分子について明らかとする。(4.マイクロアレイを用いた遺伝子発現の網羅的解析)呼吸器系ウイルス感染時に遺伝子発現が増加する、自然免疫に関わる因子について網羅的に解析する。(5.タイト結合の形態的、機能的解析 )すでに報告した手法を用いて(Ohkuni T, et al. Toxicol Appl Pharmacol. 2010)タイト結合の発現および機能解析を行う。組織学的,RNAレベル,タンパクレベルでの解析を行う。さらにTERを用いて、ウイルス感染細胞、非感染細胞におけるタイト結合バリア機能の解析を行う。またタイト結合の変化とウイルス複製・出芽の関連性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の研究方策に従い、マイクロアレイ、免疫染色に使用する抗体、PCRおよびウェスタンブロットに使用する抗体、細胞培養に必要な培養液、関連学会への参加・報告、論文発表に使用する予定。
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