2012 Fiscal Year Annual Research Report
上気道粘膜上皮におけるウイルス認識受容体を介した生体防御機構の検討
Project/Area Number |
23791916
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
大國 毅 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40464490)
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Keywords | 鼻粘膜 / 上皮 / 自然免疫 / 上気道 / タイト結合 / RSウイルス |
Research Abstract |
呼吸器ウイルスに対し、気道上皮は宿主生体防御の最前線に位置する。気道上皮には、感染早期に発動する防御システムとして自然免疫が備わっている。 自然免疫のうち、病原体が普遍的にもつ基本構造(細胞膜構成因子、核酸)を、非自己と認識するパターン認識受容体が中心的な役割を果たしている。ウイルスパターン認識受容体には、細胞膜やエンドソーム膜上に発現するToll like receptors (TLRs)と、細胞質内に局在するRIG-1 like receptors (RLRs)がある。近年、特にウイルス核酸の認識に関わるRLRsについて注目されている。また気道上皮細胞膜頂部の細胞間接着装置タイト結合も、上皮バリアにより細胞の内外を隔てており、細胞外の病原体侵入を防ぐことで自然免疫の一端を担っている。 本研究目的は、気道上皮がどのように呼吸器ウイルス感染防御しているのか解析することである。ウイルスにはその種類により感染する宿主が異なること、感染する臓器が異なること、これらにより多様性を有する。このためウイルス研究を行う際、動物実験、不死化した癌細胞を用いた実験結果では、ヒトの生体内で実際に起こっている現象をとらえているか、解釈が困難であった。そこでわれわれは、手術で得られたヒト鼻粘膜上皮組織から得られる正常ヒト鼻粘膜上皮細胞を用い、呼吸器ウイルス感染実験を行った。 呼吸器ウイルスのうちRSウイルスにおいて、感染させた正常ヒト鼻粘膜上皮細胞ではタイト結合分子の一部が発現増加・局在変化をきたす現象が確認された。これはウイルス感染を模擬する人工合成核酸Poly I:C処置時とは異なる反応であった。本来ウイルス感染を抑制するタイト結合分子が、ウイルス複製・出芽に利用されていることが示唆された。またこれらの現象に関わる候補シグナル分子についても明らかとなった。
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