2012 Fiscal Year Research-status Report
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23791917
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 輝久 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (80508812)
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Keywords | 移植・再生医療 |
Research Abstract |
ラットの歯肉粘膜下層から組織片培養を行った線維芽細胞(FB)とラットの腹部・そけい部から脂肪組織から得られた細胞群(SVF)を3世代の継代培養を経て脂肪組織由来幹細胞(ASC)をそれぞれラット気管上皮細胞と共培養を行った。FBまたはASCをI型コラーゲン溶液に懸濁、ゲル化させ、その上層で気管上皮細胞がコンフルエントに達するまで通常培養し、上皮の形態形成を促進するため空気暴露培養を行うことに成功した。 FBと共培養した場合、正常気管上皮である偽多列線毛上皮層の形成を促進させた。ASCと共培養した場合は上皮の厚みと上皮基底細胞数を増加させたものの偽多列線毛上皮層の形成は認められなかった。FBが気管上皮の線毛、杯、基底細胞の分化指標であるβ-tubulin IV, MUC5AC, keratin 14の発現に与える影響をreal-time PCRで測定した。気管上皮細胞単独の場合、いずれの分化マーカーの発現も低い数値を示したが、共培養を行った場合は、3種の遺伝子とも高い発現レベルを示し、気管上皮細胞への誘導能が確認された。同様にASCが気管上皮細胞のβ-tubulin IV, MUC5AC, keratin 14の発現に与える影響をreal-time PCRで測定した。β-tubulin IV, MUC5ACの発現量は気管上皮細胞単独の場合より減少し、keratin 14の発現量はFBと共培養した場合より増加していた。FBは気管上皮の分化誘導にASCは上皮細胞増殖に促進的に働くことが確認された。この2種の細胞を利用し細胞層状配列構造(ハイブリッド3次元培養)をおこなった。ポリプロピレンメッシュにFB、またはASCを含むコラーゲンゲルを層状に作製することができた。現在、移植に際して、基底層側、上皮層側どちらにどの細胞を配置した方が有効であるか検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定した研究実施計画とほぼ一致した達成度が得られたと評価できる。また、東日本大震災の影響で平成23年度に計画して遅れがみられた研究内容も挽回できたものと考える。しかし、培養細胞が多量に必要になることが予測されていたが、研究の進行に重点を置き、安定した質の細胞回収、恒温器の確保、培養液量の短時間調整が達成されていない。その事由として当研究機関は震災被災後、原発事故関連の対応協力行っており、様々な時間的・人材的な制約を受けた。本年度以降、徐々に時間的制約は解除されつつあり、細胞調整に投じられる時間が調整でき未達成の事項も解決できるものと思われる。引き続き、震災の復興に大きく努力しそれとともに本研究の充実を図る考えである。
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Strategy for Future Research Activity |
FB、ASCを採取したラットおよびウサギを用い、頸部外切開の後に高周波メスで気管の障害モデルを作製し、細胞層状配列構造(ハイブリッド3次元培養)で作製した再生組織を移植する。移植細胞は自家移植となる。 移植した細胞によって組織修復過程における気管の再生、特に上皮の再生と血管新生について、どのような影響を受けているかを免疫組織学的に、また、透過型・走査型電子顕微鏡を用いて形態的に評価する。血管誘導効果については血管内細胞に特異的に発現するvon Willebrand因子の免疫染色を行い新生血管の程度も定量的に評価する。 臨床導入するため、効率よく、ヒトより安全衛生的に移植細胞を回収することをめざし、細胞回収効率を改善させ、細胞層状配列構造(ハイブリッド3次元培養)の安定性を恒常化する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、検体採取のためのルーペの購入 旅費として、更なる知見を得るために学会への参加 その他、人件費などに研究費をあてる予定である。
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