2012 Fiscal Year Research-status Report
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23791923
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
山下 哲範 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50588522)
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Keywords | 超音波 / 骨導 / 語音 / 補聴器 |
Research Abstract |
超音波領域の周波数は気導では可聴することができないが、骨導を用いることで最重度難聴者であっても聴取することができる。このことを利用して、骨導超音波補聴器の試作を行っている。われわれは、その語音弁別に注目して、骨導超音波補聴器システムの最適化を目指す研究を行っている。これまでに我々は、昨年度までに変調方法や変調度の最適化を行うことができ、現状の超音波補聴器が健常者において現行のシステムが骨導超音波を一番効率的に伝達することができると考えるに至った。また、聴力正常者では、異聴傾向が骨導超音波語音で独自性があることがわかり、可聴気導音との相違が明瞭となり、その聴取方法の違いをうらづける結果がえられた。 本年度は聴力正常者において、日本語単音節の弁別について被験者を増やして検討したが、呈示母音が/a/の場合が特に異聴が起こりにくいということ、/e/が/o/に特に多く異聴されることなどが新たに分かった。また今年度は重度難聴者における弁別検査を複数回行い、そのリハビリ効果や異聴傾向を調べることができた。ただし、超音波を聴取できなかった難聴者も多く、また聴取できても言葉までは全く理解できない被験者が多くいた。この理由を新規の実験で検索していく必要がある。 今後も難聴者における異聴傾向を症例を増やして確認し検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は難聴者による実験を行う計画であった。 健聴者における異聴は昨年度までに一定の傾向をつかむことができていたが、症例を増やすことで、さらに明らかな傾向をつかむことができた。一方で、子音の弁別に関しては、症例を増やしても明らかな異聴傾向が認められなかった。骨導超音波の聴取メカニズムもいまだ完全には判明しておらず、動物実験なども含めた総合的な研究も必要であると考えられた。難聴者においては重度難聴者で実験、リハビリをすすめその効果を示すことができた。また、以前の実験で健聴者で示されていた視覚による影響も、難聴者でも認められることが確認できた。 難聴者においては予想以上に超音波を聴取できない、または聴取できても語音として弁別できない被験者が多く、症例数が増えずに計画通り実験が進めないことが多くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、骨導超音波補聴システムの評価や、実用化に向けた最適化を進めることができ、健常者においては現行の骨導超音波補聴システムが考えられる最適な伝達環境であると思われる。大がかりなプログラミングの改良や補聴システムに改良の必要性はないと考えられ、現行の試作機を使用し難聴者を対象とした実験を進めていく必要がある。 今年度は被験者を多く集めることができなかったたが、今年度は、難聴のレベルや疾患、年齢などを加味しながら、骨導超音波の語音聴取能を評価していく。可聴音で得られた聴覚機能の評価と骨導超音波システムを用いた実験の結果を比較し、どのtypeの難聴者にどの程度有効であるのかを検討する。そのうえで、可聴音と骨導超音波の知覚特性についても検討を行っていく。また、希望がある難聴被験者においては日常生活における利便性等を調べるために試作補聴器を貸し出ししていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
難聴者の実験において、今後大きな問題が生じない限り、現行の骨導超音波補聴システムのプログラミングの改良や補聴システムに改良に研究費を多く費やす必要はないと考えられる。しかし、現行の試作機は健聴者において最適化されたものであり、難聴者の実験結果によっては改良を行っていくことが必要になるとかんがえられる。繰り越し額に関しては、改良費や被験者の謝礼日として必要になると考える。
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Research Products
(3 results)