2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791923
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
山下 哲範 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50588522)
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Keywords | 超音波 / 骨導 / 語音 / 補聴器 |
Research Abstract |
20kHz以上の高周波音は気導では聴取できない。しかし骨導経由であれば聴取可能であり、この現象は最重度難聴者でも起こることが証明され、骨導超音波を利用した最重度難聴者用の超音波補聴器の開発を行っている。我々は超音波補聴システムの実用化に 向けて最適化をおこない、健聴者においての最適な変調方法や変調度を明らかにしてきた。また、可聴気導音との語音弁別の相違を明らかにし超音波独自の異聴傾向などを報告している。これは気導可聴音と骨導超音波音の聴取メカニズムの違いに依存すると考えられ、今後の聴取メカニズムの完全な解明にも寄与すると考えられる。 本年度は、若年聴力正常者における被験者をさらに増やすとともに、年齢や難聴タイプ別の超音波弁別能を評価するため、中高齢の聴力正常者や数人の難聴者を被験者として実験を行った。その結果高齢聴力正常者では、呈示音圧を大きくすると弁別能は上昇するが、呈示音圧が小さい時には語音聴力検査の正答率が非常に低く、若年正常者と比べると弁別能が低い傾向が示された。また、数人の老人性難聴者(高音障害)ではやや弁別能の上昇が緩やかであることがわかった。これは骨導超音波の聴取に高周波領域(蝸牛の基底回転)が関与しているというこれまでの聴取メカニズムの報告を支持するものであると思われる。今年度の若年聴力正常者のうち、2名に著しく超音波の聴取能が低い被験者が存在した。この2名を用いて、聴取リハビリテーションを行った。1か月のリハビリテーションで語音正答率はかなり改善したが、その他の若年正常者に比べてリハビリ後でも正答率は劣っていることが示された。今後このような被験者を集め、その原因を検索していく必要がある。今年度は数人の難聴者の実験を行うこともできたが、まだまだ絶対数が少ないため症例数を増やして検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は難聴者の被験者をさらに増やして実験の総まとめを行う予定であった。 本年度においても、重度難聴者の被験者を多くは集めることができず、また、超音波を聴取できないまたは聴取できても言葉としてとらえられない被験者がおり異聴の分析を行うまでには至らなかった。また、試作補聴器の貸し出しも検討していたが希望者は現れなかった。 しかし、計画していた年齢別の弁別能の評価は行うことができ、難聴のタイプ別の評価も少しではあるが確認するに至っている。また、予定してはいなかったが、若年聴力正常者のうち、聴取脳が著しく悪い被験者のリハビリテーション効果を評価することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までに骨導超音波補聴器の実用化に必要なシステムの評価・最適化を進めることができ、健聴者における評価も固まりつつある。おおがかりな補聴システムの変更は現在必要性がないと考えられる。今後は現行の試作機を使用した難聴者における弁別能の評価が急がれる。 また、年齢別の実験を行うことや、難聴のtype別の評価、特に高音障害型の難聴者で聴取能を評価することで聴取メカニズムの仮説の証明に寄与する可能性も考えられる。このような被験者を増やしていく。またどのような難聴者に効果が高いのかを判別し、希望者への貸し出しを積極的に推進していくことで日常生活での利便性などを確認していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に難聴者に対して骨導超音波語音聴覚検査を行い、どのような難聴のtypeに対して骨導超音波補聴器の効果が高いのか等を評価する準備を行っていたが、十分な数の難聴被験者を確保できなかった。このため、当該助成金が生じた。今後、症例を増やして再度効果を判定する必要が生じたため、追加検査を行うこととした。このため、未使用額が生じることになった。 このため、次年度にさまざまな難聴者に対して超音波語音弁別検査を施行・評価する実験と、健聴者の年齢を吟味した弁別脳・異聴傾向などを評価する実験を追加で行うこととし、未使用額はその被験者謝金などの必要経費として使用することとしたい。 また、実験結果で超音波補聴システムの改良が必要となった場合はその経費として使用する予定である。
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