2013 Fiscal Year Research-status Report
蝸牛内完全埋込み型人工コルチ器作製へむけた人工シナプス形成を確立するための研究
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23791930
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
増田 正次 杏林大学, 医学部, 講師 (20317225)
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Keywords | らせん神経節細胞 / 内耳 / 聴力 / シナプス / 瘢痕 |
Research Abstract |
研究の目的は人工物とらせん神経節の軸索との間にシナプスを形成させること、つまり人工シナプスを形成することである。 前年度、らせん神経節細胞と有毛細胞周囲組織を共培養すると、有毛細胞周囲に付着した細胞群(線維細胞様細胞。蝸牛の基底板、外側壁等の細胞である可能性が高い。)によりらせん神経節細胞の軸索伸長が阻害されることを報告した。本年も、この現象についてさらに培養環境を変更し確認を行った。線維細胞様細胞によって、らせん神経節細胞本体が障害、消失することが分かった。この現象を生体内の現象に照らし合わせて考えてみると、有毛細胞障害後の瘢痕組織の形成、その除去が内耳障害後の聴力回復、維持に重要であることが予想される。過去の有毛細胞再生の報告を見ると、有毛細胞障害を与えた急性期にこれらの細胞の再生または移植を行っており、新生有毛細胞とらせん神経節細胞とのシナプス形成を報告している。急性期を過ぎた場合このような結果が得られない、つまりは聴力回復が得られない可能性が示唆される。当初の研究実施計画には含まれていなかった事項であるが、この瘢痕組織への対処がシナプス形成に重要であると考え、この点についても26年度は研究を進めたい。 また、らせん神経節細胞の軸索伸長が多分に細胞がマトリックスによって影響される可能性が示唆された。これは、コーティング剤が同じであっても培養容器がガラスかプラスチックかによって実験結果が大きく左右される可能性が示唆された。改めて、過去の論文で使用されている抗シナプスマーカー抗体の特異度が正しい結果を出すに十分なものか疑問を感じる結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
過去の論文で使用されている抗シナプスマーカー抗体の特異度に信頼がおけなかったのが、実験予定を遅らせている最大の要因である。また、過去に内耳、聴力再生実験で問題点として指摘されていない瘢痕組織による著明なニューロン障害現象を観察しており、これも実験計画を遅らせている要因である。ただし、一方でこの点は新たな研究課題を見つけ出すきっかけともなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
人工シナプス形成の有無について軸索と人工物との間にシナプスマーカーの発現を確認する前に、軸索と人工物との物理的な接触の確率を上げるような方策について検討する。コルチ器周囲に付着する線維細胞様細胞を除去した場合にらせん神経節細胞の成長がどのように変化するを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
抗シナプスマーカー抗体の特異性に問題が生じ実験の進行が遅れた。培養環境による細胞成長の影響を見るため、実験の進行が遅れた。 瘢痕組織の影響を調べるために必要な薬剤と抗体の購入に使用予定である。
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Research Products
(1 results)