2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)に関連した喉頭腫瘍に対する喉頭局所免疫の関与
Project/Area Number |
23791949
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
千年 俊一 久留米大学, 医学部, 講師 (20299514)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | HPV陽性喉頭癌 |
Research Abstract |
喉頭乳頭腫、喉頭癌および喉頭良性疾患において、まずHPV陽性腫瘍に対する抗体の証明を行った。また、腫瘍と特異的HPV抗体の局在解明を試みた。喉頭分泌液および静脈血中の各免疫グロブリン(IgM、IgG、IgA、分泌型IgA)濃度、総タンパク質濃度、Cytokeratin 19 fragment濃度を測定した。結果、疾患の内訳は喉頭癌12例、喉頭乳頭腫4例、他の喉頭疾患15例であった。HPV陽性例は31例中6例あった。内訳はHigh Risk型(すべて16型DNA)が3例ですべて喉頭癌(T1a : 1例、T2 : 2例)であり、Low Risk型が3例ですべて喉頭乳頭腫であった。本検討での喉頭癌からのHPV陽性率は12例中3例の25%であった。HPV陽性6例はHPV陰性25例に対して各分泌液組成の濃度が高い傾向があり、特にS-IgAにおいて有意差を認めた。喉頭癌例は非喉頭癌例に対して、分泌液組成の濃度が高い傾向にあった。HPV陽性例の分泌液中のS-IgA濃度上昇していたという結果は、喉頭局所でのHPV感染やまた、HPV陽性喉頭癌3例はHPV陰性喉頭癌9例に対して、各分泌液組成の濃度が高い傾向にあった。HPV陽性癌腫の発現により粘膜免疫が活性化し、異物排除や治癒機転として強く発現していることが示唆される。少なくともHPVの喉頭上皮内への進入や喉頭感染後の播種に対して、S-IgAは活性化し抑制的に働いていると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍と特異的HPV抗体の局在解明のために2重染色を行い良好な結果が出つつあるが、high risk HPV喉頭癌の症例数が意外に少ない。症例数を増やす必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
喉頭乳頭腫および喉頭癌からのHPVに対する特異的HPV抗体の証明を行う。それぞれHPV 8-VLP (Virus- Like Particle)およびHPV 16-VLPを抗原とした抗体価測定ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)法で証明し、抗HPV- 8抗体および抗HPV-16抗体の存在とHPVの局在を対比し解析する。この際、H.E.染色した喉頭大切片スライドで腫瘍と正常組織が混在した部分を確認しておく必要がある。これら抗HPV-DNA抗体と前年度に行っているHPV-DNAの局在を2重免疫染色にて対比し、両者の関連性を証明する。また、再発性乳頭腫に対しては使用適応の範囲内でHPVワクチンを使用する。投与前後における抗原抗体反応に関しては前述の方法を用いて、HPVワクチン使用例との間の相違点を検討する。可能であればワクチンの局所注入を行ない切除後の喉頭乳頭腫および癌の再発抑制の可能性についての検証を行なう。ワクチンの使用においては、抗体価上昇を確認するまでの間に約半年の時間を要すると思われる。確認の時点で腫瘍が消失している場合は、血清および分泌液中の抗体価測定のみを行なうことで研究結果が得られる
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上の作業は、すでに当研究室内に設置した検査・解析装置で可能である。一般病理用容器や試薬などの消耗品の購入や採取組織のSRL(外注)依頼を行うことで研究を実施できる。特に、VLPとワクチンの購入には1検体当り約6万円の費用が掛かる(10検体での実験を予定している)。
|