2013 Fiscal Year Research-status Report
老人性難聴の分子病理学的解析~蝸牛外側組織に焦点を当てて~
Project/Area Number |
23791953
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
木村 百合香 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40450564)
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Keywords | 老人性難聴 / 血管条 / 蝸牛外側壁 / mRNA / レーザーマイクロダイゼクション / 免疫染色 / ヒト側頭骨病理 |
Research Abstract |
老人性難聴の病理組織学的解析は、Schuknechtらにより感覚細胞性、蝸牛神経性、血管条性、基底板振動障害性の4つのタイプの形態学的解析分類がなされたが、約1/4の症例で原因を説明しうる光学顕微鏡的病理組織所見を持たないとされている。24年度研究では、ヒト側頭骨病理組織切片における免疫組織学的解析を行い、前期高齢者と超高齢者間での比較を行った結果、内耳に多く発現するcochlinが、ラセン靱帯基底稜を中心に、超高齢者群において広くべったりと発現する傾向を認め、ラセン靱帯におけるcochlin分布の変化が老人性難聴に影響を与えている可能性が示唆された。そこで、ラセン靱帯におけるcochlin mRNA発現の定量を行うために、ヒト側頭骨病理組織切片からの、レーザーマイクロダイゼクション法によるmRNA定量解析を予定した。まずは、定量技術の確立目的に、ヒト保存側頭骨病理組織切片からの比較的安定なDNAの定量解析を試みた。MELAS症例の側頭骨において、有毛細胞、ラセン靱帯、ラセン神経節細胞におけるmt3243変異率の測定が可能であり、その組織学的所見との対比により、内耳におけるmt3243変異に対する機能単位別の脆弱性を明らかにすることができた。一方、mRNAは、ホルマリン固定により断片化していることから、微小検体からの定量化は困難であり、本年度は、その手技の確立を行っているところであり、次年度の引き続きの課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度も前年度に引き続き、ヒト側頭骨病理標本より前期高齢者・後期高齢者間でのcochlinをコードするCOCH mRNAの蝸牛外側壁における定量解析を行う予定であったが、定量解析方法の確立に難渋している。次年度以降も引き続き定量解析方法の確立に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、レーザーマイクロダイゼクション法とTaqManPCR法を用いた蝸牛外側壁におけるCOCH mRNAの定量解析方法の確立に努める。Cochlinは、4つのisoformを持つが、ラットの内耳においては成獣でp63の増加が認められることから、ヒトにおいて加齢と共に変化するCOCH mRNAに関し、どのisoform由来かの検討を行う。また、近年、miRNAによる遺伝子発現の制御がトピックとなっており、難聴においてもその関与が報告され始めている。そこで、併せて、蝸牛外側壁におけるmiRNAの動態についても、ヒトの各世代間で比較を行うべく、解析方法の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は研究所移転にともない、研究活動を一時中断せざるを得ない時期があったため。 次年度は、一年を通じての研究活動が可能であり、COCH定量のための定量的PCR解析試薬やmicroRNA解析試薬、組織切片作成用の固定・包埋試薬等の購入や、学会参加・論文校正費等に使用予定である。
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