2014 Fiscal Year Research-status Report
老人性難聴の分子病理学的解析~蝸牛外側組織に焦点を当てて~
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23791953
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
木村 百合香 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40450564)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 老人性難聴 / ヒト側頭骨病理学 / cochlin / MELAS |
Outline of Annual Research Achievements |
老人性難聴は、ヒト病理組織学的には、感覚細胞性、血管条性、蝸牛神経性、基底板振動障害性の4つのタイプの形態分類がなされている(Schuknechtら)。しかしながら、老人性難聴症例の約1/4の症例では、原因を説明しうる光学顕微鏡的病理組織所見を持たないとされている。我々は、ヒト側頭骨病理組織学的切片において、内耳に多く発現するタンパクであるcochlinの免疫組織学的解析を、前期高齢者と超高齢者(85歳以上)の間で比較した。その結果、超高齢者群では、ラセン靱帯基底稜を中心とし、cochlinが広く発現する傾向を認めた。また、蝸牛凍結標本のmRNA解析では、cochlinをコードするCOCHの発現が、前期高齢者に比し、超高齢者において多く発現する傾向であった。これらの結果は、光学顕微鏡的病理組織所見のない老人性難聴の発症に関与している可能性があり、その病理学的意義について、レーザーマイクロダイゼクション法を用いたラセン靱帯におけるCOCH mRNAの発現量解析を施行中である。 また、ミトコンドリア脳筋症の一つであるMELASの側頭骨病理組織学的解析と、有毛細胞・ラセン靱帯・ラセン神経節細胞におけるミトコンドリアDNA3243変異率の測定を行い、蝸牛外側壁のなかの血管条においては、変異率が低いにもかかわらず高度な萎縮が認められることが判明した。血管条のミトコンドリア機能障害への脆弱性が示唆される結果であり、血管条性の老人性難聴においてもミトコンドリア機能の解析を今後検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト側頭骨病理組織切片における、mRNAの定量解析を行っているが、ホルマリン固定によるmRNAの断片化により、定量解析方法の確立に難渋しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、レーザーマイクロダイゼクション法とTaqManPCR法を用いたCOCHmRNA発現の定量解析を行う。近年、核酸解析においてはpreamplification法が目覚ましい進歩を遂げており、本法の導入が本研究の打開策となることが期待される。また、近年miRNAによる遺伝子発現の制御がトピックとなっているが、難聴においてもその関与が報告され始めている。そこで、本手法の確立により、miRNAの蝸牛外側壁における加齢にともなう動態を解析したい。
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Causes of Carryover |
レーザーマイクロダイゼクション法により採取された検体のmRNA解析体系の確立が遅れたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続きレーザーマイクロダイゼクション法により採取された検体のmRNA解析体系の確立と、miRNA解析の確立に使用する。
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Research Products
(4 results)