2011 Fiscal Year Research-status Report
プロレニンを標的とした糖尿病網膜症の新規治療薬の開発
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23791955
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
横田 陽匡 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60431417)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 受容体随伴プロレニン系 / 虚血網膜 |
Research Abstract |
本研究は、受容体随伴プロレニン系の制御機構を解明し、糖尿病網膜症の新規治療薬の開発の可能性を探ることを目的とする。実験結果が当初予想されていた結果と反するものになったため、当初の予定より遅れている。これに関しては、『現在までの達成度』の箇所で詳細を報告することとする。我々は、実験を開始する以前は、虚血網膜では受容体随伴プロレニン系が亢進すると考えていた。すなわちプロレニンのみならず(プロ)レニン受容体の発現が亢進すると予想していた。これまでの検討では、虚血網膜における(プロ)レニン受容体の発現量が低下していることが確認された。実験方法の整合性を確認するために、pERK の発現を確認したところ、これまでの報告と同様に亢進していた。すなわち実験方法によるエラーではなく、今回の我々の結果は、虚血網膜では(プロ)レニン受容体の発現が低下している事を示唆している。この予想外の結果から、改めて血清プロレニン値の再検討を行った。すなわち非糖尿病患者の血清プロレニン値を測定し、糖尿病網膜症以外の眼症候が血清プロレニン値と関連があるかどうか、また糖尿病以外の因子で血清プロレニン値に関連するものがあるかどうかを検討した。この検討では、拡張期血圧が血清プロレニン値と負の相関を示したことと、今回のデータを我々の以前に報告した糖尿病患者における血清プロレニン値と比較したところ、糖尿病患者で有意に高値を示した。以上のことから、改めて受容体随伴プロレニン系が糖尿病網膜症に特異的に関連があることと、その測定の意義、新たな治療法開発の標的となりうることを、第116回日本眼科学会に報告した。さらに、英文論文にする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点での進捗状況は、当初の予定より遅れている。その理由としては、当初想定していた結果に、反する結果が出たことにある。具体的には、実験開始以前は、虚血網膜において受容体随伴プロレニン系は亢進していると考えていたが、最も重要と考えられる(プロ)レニン受容体の発現が低下していたことにある。(プロ)レニン受容体は、受容体随伴プロレニン系におけるアンジオテンシン依存性経路と非依存性経路のハブとしての役割を担っている。すなわち(プロ)レニン受容体の発現が低下することは、いずれの経路の活性が低下していることが考えられる。(プロ)レニン受容体の発現量の低下が、必ずしも受容体随伴プロレニン系の活性低下になるとは結論づけることができないが、受容体随伴プロレニン系自体の活性化の定量法がないことが、進捗の遅れの主因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
推進方策の一手として、研究計画書に記載してあるように、網膜虚血再灌流モデル以外での検討を行う。すなわちレーザーを用いて虚血網膜症を作成し、その網膜における(プロ)レニン受容体の発現を定量する。我々はこれまでに網膜虚血再灌流モデルを用いて、酸化ストレスが神経節細胞死に重要な役割を果たしていることを報告し、糖尿病網膜症と同様のメカニズムであることを証明した。しかしながら、これまでに網膜虚血再灌流モデルにおける受容体随伴プロレニン系と糖尿病における受容体随伴プロレニン系の発現の相違性は検討されておらず、網膜虚血再灌流モデルと並行して、その他の虚血網膜モデルを併用することとした。次に、当初の実験計画書には記載はないが、当研究室で使用可能な培養血管内皮細胞を用いて高血糖負荷を行い、(プロ)レニン受容体の発現が網膜血管内皮細胞で、どのように発現しているかを検討する。本来であれば神経節細胞を用いるべきであるが、まずは当教室で使用可能な細胞を用いる事により、余計なコストをかけず局所でのプロレニン受容体の発現を確認する。我々は以前に糖尿病患者における血清プロレニン値が高くなることを報告したが、(プロ)レニン受容体の発現はまだ確認していない。実験を開始する前は、糖尿病では受容体の発現も亢進すると予想していたが、(プロ)レニン受容体の発現が低下している可能性がある。以上の検討を行う事により、(プロ)レニン受容体の発現が亢進すると仮定した当初の予想の妥当性を検討する事により、新たな知見を見いだすことができ、さらに今後の実験計画を適当なものにすることができる考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
収支状況報告書に記した次年度使用額が発生した事由は、当初の予定では、初年度にHRPを合成して、網膜虚血再灌流モデルに投与することになっていたが、それを実施することができなかったためである。先述したとおり、網膜虚血再灌流モデルでは、(プロ)レニン受容体の発現が亢進すると考えていたが、それとは反する結果となってしまったため投与を行わなかった。上述した、培養血管内皮細胞での発現、あるいはレーザーによる虚血網膜症による結果を勘案して、HRP の投与の妥当性を検討する。次年度の研究費に関しては、新たなモデル作成、培養系に関する設備備品への投資は発生しない。これらに関するものは、既に当施設にあるものを活用できる。研究費の使途に関しては、主に消耗品、学会旅費、論文作成に当てられる。研究成果としては、非糖尿病患者における検体を用いた検討を、平成24年5月の米国での国際学会で発表予定である。また消耗品に関しては、計画書に示してある通り免疫染色やウェスタンブロッティングなどの蛋白定量に用いる抗体に、主に使われる事になる。受容体随伴プロレニン系自体が新しい概念であるために、現在でも新しい抗体が製品として各メーカーから販売されている。それぞれの抗体の特徴を活かして研究に活用していく事になる。
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Research Products
(1 results)