2011 Fiscal Year Research-status Report
アカントアメーバ角膜炎に対するナノテクノロジーを用いた新規治療法の開発
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23791959
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横倉 俊二 東北大学, 大学病院, 講師 (30400378)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アカントアメーバ / ナノテクノロジー |
Research Abstract |
乳酸桿菌(Lactobacillus fermentum)を用いた既報を用い、銀ナノ粒子を作成した。アメーバ株を既報(Sacramento RS, Parasitology 2009)にしたがって培養し、96wellプレートにtrophozoiteとcystの浮遊液をそれぞれ用意した。それぞれの浮遊液に20, 40, 60, 80μg/mlに濃度をふったナノ粒子を加えた培地を加え、25℃で7日間培養した。培養期間中は顕微鏡で連日各wellを観察し、well内の決められた区画(6箇所)の中での細胞数を計測することでwell内の細胞数を割り出し、培養初日からの細胞減少率を計算した。ポジティブコントロールとして同様に濃度をふったステリクロンを含んだ培地を加え、細胞減少率を比較した。この結果、trophozoiteに銀ナノ粒子液を加えたwellでは、ステリクロンを加えたwellよりも有意に細胞の減少がみられ、抗アメーバ効果が高いことが示唆された。一方でcystに銀ナノ粒子得液を加えたwellでは、ステリクロンよりも細胞が減少する傾向がみられたが、有意差はみられなかった。 観察後、ナノ粒子を加えているwellからアメーバを採取して走査型電子顕微鏡用に切片を作製し、実際にナノ粒子がアメーバ内に取り込まれているか観察した所、trophozoiteとcystの両方でナノ粒子のアメーバ内への取り込みが確認できた。 一方で家兎角膜上皮(SIRC cell)に、同様に濃度をふったナノ粒子を加えて4時間インキュベーションした後、MTTを0.5mg添加して更に4時間インキュベーションし、更に10%ドデシル硫酸ナトリウム100μlを添加して暗所で一晩インキュベーションし、570nmでの吸光度を測定することで細胞障害性を計算した所、家兎角膜上皮の傷害率は5%未満と軽微であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度計画における、小項目A. 銀ナノ粒子の作成、小項目B. in vitroにおける、銀ナノ粒子液の抗アメーバ作用についての解析、小項目C. 既存MPS(マルチパーパスソリューション、ソフトコンタクトレンズの洗浄・保存を兼ねる液)への銀ナノ粒子添加による、アメーバ増殖抑制に関する解析 のうち、A, BはFACS解析を除いて完了しており、小項目BにおけるFACS解析と小項目Cも現在実験を開始していることから、当初計画案については概ね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度計画における、小項目B. in vitroにおける銀ナノ粒子液の抗アメーバ作用についての解析のうち、銀ナノ粒子液によるアメーバ細胞膜の透過性亢進についての解析、及び小項目C. 既存MPSへの銀ナノ粒子添加によるアメーバ増殖抑制に関する解析を進める。小項目Cについては、以下のように進める。96wellに、培養して1×10 /mlとなるように調整したアメーバ栄養体とシスト浮遊液を100μlづつ入れておく。一方で、日本コンタクトレンズ学会と国民消費者センターとの共同実験でアメーバ増殖抑制作用が弱いと判定されたMPS8種類に、20, 40, 60, 80μg/mlとなるように銀ナノ粒子を加えたものを添加し、一般的なMPSの付け置き時間である4, 8, 16, 24時間後の各wellの細胞数を計測し、銀ナノ粒子の添加による抗アメーバ作用が増強したか解析する。 その後平成24年度計画を遂行する。これまでの実験で、十分な抗アメーバ作用を発揮し、かつ角膜上皮への毒性が少ない濃度を割り出し、これを点眼に用いる濃度とする。次に、家兎の角膜に一定量のアメーバ栄養体を接種してアカントアメーバ角膜炎の状態とする。ここに銀ナノ粒子点眼を1時間ごとに点眼し、14日間連日、細隙灯顕微鏡による角膜所見の変化・生体共焦点顕微鏡であるHRT-II角膜モデュールによる角膜内アメーバ数の変化・涙液のreal-time PCRによるアメーバコピー数の変化を観察し、銀ナノ粒子点眼によってアメーバ角膜炎が改善するか解析する。14日目にはこの家兎をsacrificeし、病変部角膜を採取して電顕用に切片を作成し、銀ナノ粒子の移行などの組織学的解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成23年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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