2012 Fiscal Year Research-status Report
生体共焦点顕微鏡を用いた角膜輪部の観察による角膜上皮幹細胞ニッチに関する研究
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23791962
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大家 義則 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20599881)
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Keywords | 再生医学 / 幹細胞 |
Research Abstract |
原田病と診断されて通院中の9例16眼(原田病群)および正常眼6例6眼(コントロール群)を対象として生体共焦点顕微鏡(Heidelberg Retina Tomograph II Rostock Corneal Module)をもちいて角膜輪部を観察し、palisade of Vogt部における角膜輪部基底細胞の長経および面積を計測した。 原田病群における角膜輪部基底細胞の長径および面積はおのおの16.1±1.1mおよび135±15m2であり、コントロール群においてはおのおの11.2±2.1mおよび113±15m2であった。原田病群ではコントロール群に比べて、角膜輪部基底細胞の長径および面積が有意に大きいとの結果であった(おのおのp=0.001, p=0.005 Mann-Whitney test)。 原田病においては角膜輪部のメラノサイトが破壊され、それによって角膜上皮幹細胞ニッチが変化して、角膜輪部基底細胞が正常より大きくなっている可能性が示唆された。 本研究によってメライノサイトと角膜上皮幹細胞ニッチの関係性が生体レベルで示唆されたことは、角膜上皮幹細胞の維持機構に関するメカニズム解明の一助となる可能性がある。今後は症例数を増やして検討を進め、in vivo観察において幹細胞ニッチの観察を進める必要がある。 現在行われている培養口腔粘膜上皮細胞シートを用いた眼表面再建術の長期治療成績を向上させるためには、細胞シート中に含まれる幹細胞の長期維持を図る必要がある。本研究によって、角膜上皮幹細胞の維持機構にメラノサイトが重要である可能性が示唆されたことは、培養口腔粘膜上皮細胞シート中のメラノサイトについての重要性が示唆されたことになり、シート移植の長期成績を向上させるために極めて重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原田病患者および正常眼での生体共焦点顕微鏡による角膜輪部のpalisade of Vogt部の基底細胞の形態観察を行っているが、正常眼にくらべて原田病患者では角膜輪部基底細胞が大きく、メラノサイトの破壊による角膜上皮幹細胞ニッチの破壊がこの原因となっている可能性が示唆されている。 しかしながら現在のところ症例数の蓄積が十分ではなく、結論を出すことが出来ていないことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は症例数を十分に重ねることで、生体共焦点顕微鏡による輪部観察の結果から、角膜上皮幹細胞ニッチに対するメラノサイトの影響についてin vivoの立場から知見を得る。また色素細胞の密度や色素細胞と角膜上皮幹細胞との位置関係についての解析を行う。角膜中央部の基底細胞はTA細胞(transient amplifying)と考えられているが、これについても変化がないかどうかを検討する。これらの検討を通じて角膜輪部の構造と幹細胞機能維持についてin vivo観察による検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究推進に必要な共焦点顕微鏡関連消耗品(共焦点顕微鏡用のトモキャップや眼との接触部位に用いる眼表面保護材など)の購入に充てる。さらに研究推進のため必要な情報収集のため、国内及び国際学会参加や角膜および再生医療の有識者を訪れる予定である。
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