2011 Fiscal Year Research-status Report
眼内血管新生に対するVEGF-A165bの抑制効果
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23791966
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
馬場 隆之 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (00361725)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脈絡膜新生血管 / 加齢黄斑変性 / 血管内増殖因子 / VEGF-A165b / 網膜血管新生 / 糖尿病網膜症 |
Research Abstract |
現在、先進国における高齢者の失明原因として重要な加齢黄斑変性(AMD)における脈絡膜新生血管について検討した。血管内皮増殖因子(VEGF)は脈絡膜新生血管の発生と密接に関係しているが、VEGFには転写プロセスにより2つのfamilyが明らかにされた。この2者は血管新生に対して促進(VAGF-A165)と抑制(VEGF-A165b)と相反する作用を持つことが報告されている。そこで、実際のAMD症例において、眼内液におけるVEGF-A165bの濃度を測定し、正常およびその他の眼内血管新生をきたす疾患と比較を行い、AMDにおけるVEGF-A165bの意義について検討した。AMD症例に対して、抗VEGF抗体の硝子体注射の際に、前房水を30ゲージ針と1ccシリンジを用いて約0.1ml採取し、冷凍保存したものを後日ELISA法にて検討した。ELISAは、抗VEGF-A165b抗体を用いて、サンドイッチ法にて行った。比較対照群として、明らかな眼血管病変を持たない白内障症例、糖尿病網膜症および網膜血管閉塞症の症例から採取した前房水を用いて検討した。前房水中のVEGF-A165b濃度は、AMD症例(n=66) 32.6±55.4 pg/ml、白内障症例(n=13) 26.6±50.6 pg/ml、網膜血管病変(網膜静脈閉塞、糖尿病網膜症 n=19) 18.8±27.4 pg/ml であった。AMD症例では、網膜血管病変に比べて眼内VEGF-A165b濃度は高い傾向にあった。(P=0.139、Mann-Whitney検定)この結果から、AMDでは、糖尿病網膜症などの網膜血管病変に比べて、血管新生に抑制的に働くVEGFファミリーの一つであるVEGF165bは高めに保たれている可能性が考えられた。しかし、眼内血管新生を伴わない白内障症例との間に差が見られなかったことについては検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト前房水サンプルの採取と分析は順調に進んでいるが、実験動物を用いた脈絡膜新生血管モデルの作成が、いまだ計画段階から進行していない。今後、順次動物実験を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前房水での分析では、網膜血管病変(糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症)に比べて、加齢黄斑変性では眼内のVEGF165b濃度は低めであり、コントロール(白内障)とほぼ同等であった。前房水は採取できるサンプルが少なく、複数回の分析を同一検体を用いて行うことが困難であるため、今後は硝子体手術の際に採取される硝子体液も分析を行い、網膜血管病変と非網膜血管病変の間で眼内VEGF165b濃度に差が見られるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物における脈絡膜新生血管に対するVEGF-A165bの影響を検討する。そのために、実験動物の購入、脈絡膜新生血管モデルに必要な酸化脂質の購入、組織学的検討を行うために、各種免疫染色に用いるための抗体、二次抗体などを購入する。
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Research Products
(1 results)