2013 Fiscal Year Research-status Report
眼内血管新生に対するVEGF-A165bの抑制効果
Project/Area Number |
23791966
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
馬場 隆之 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (00361725)
|
Keywords | 脈絡膜新生血管 / 加齢黄斑変性 / 血管内皮増殖因子 / VEGF-A165b / 網膜血管新生 / 増殖糖尿病網膜症 |
Research Abstract |
現在、先進国における高齢者の失明原因として重要な加齢黄斑変性(AMD)症例において、眼内液における血管新生抑制的isoformであるVEGF-A165bの濃度を測定し、正常と比較を行い、AMDにおけるVEGF-A165bの意義について検討した。さらに、眼内血管新生をきたす重要な疾患である網膜静脈閉塞症(RVO)でも検討した。 抗VEGF抗体の硝子体注射の際に、前房水を30ゲージ針と1ccシリンジを用いて約0.1ml採取し、冷凍保存したものを使用した。ELISAは、抗VEGF-A165b抗体を用いて、サンドイッチ法にて行った。比較対照群として、明らかな眼血管病変を持たない白内障症例を用いた。 前房水中のVEGF-A165b濃度は、AMD症例(n=77) <15-98(中央値16.4)pg/ml、RVO症例(n=38)<15-47(中央値<15)pg/ml、白内障症例(n=19) <15-46(中央値20.6)pg/ml、であった。コントロールとAMD症例には差はなく(P=0.63、 Mann-Whitney検定)、RVO(P=0.04)はコントロールより低い傾向にあった。この結果から、RVOでは、血管新生に抑制的に働くVEGFファミリーの一つであるVEGF165bは低値であり、AMDでは正常と同レベルに保たれていることが分かった。理由としては、AMDではVEGFのバランスがRVOほどは血管新生促進的に傾いていないことが考えられる。しかし、AMDでは病変が網膜下であり前房からは距離があり、RVOに比べるとサイトカインの変化が前房に反映しにくい可能性があることも考慮に入れる必要があるかもしれない。RVO症例では、VEGF165b低値の症例のほうが活動性の指標である中心窩網膜厚(P=0.006)と網膜下液(P=0.048)が大きく、VEGF165bの血管滲出性に対する抑制的効果を示唆する所見と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト前房水サンプルの採取と分析は順調に進み結果が出ている。実験動物を用いた脈絡膜新生血管モデルに対してのVEGF165bの反応をみる実験がいまだ途中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
動物実験については、網膜下注入による脈絡膜新生血管モデル動物の作成可能となったため、今後はリコンビナントのVEGF165bを用いて、実験的脈絡膜新生血管の抑制を検討していく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
脈絡膜新生血管モデルを用いた実験を現在行っている。ラットでの実験モデルの作成には約4週間かかり、新生血管の定量性の問題もあるために、VEGF165bを用いた血管新生抑制の効果をみるためにはある程度の時間をかけた反復実験が必要であり、進行中である。実験動物や試薬を予定よりも購入しなかったため残額が生じた。 実験動物の購入、抗体等の不足分の反応試薬の購入、実験成果の発表などに使用する予定。 実験動物の脈絡膜新生血管組織を用いた免疫染色などの実験のための試薬・抗体などは昨年度購入済みのものを持ち越して使うことが可能である。
|