2012 Fiscal Year Research-status Report
角膜移植後における内皮細胞死とミトコンドリアの動態
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23792005
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
舟木 俊成 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80384121)
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Keywords | 角膜内皮細胞 / 細胞死 / ミトコンドリア / シクロスポリン / 角膜移植術 / 膜電位 |
Research Abstract |
角膜内皮細胞は加齢とともに減少するが、それは生体内でほとんど増殖しないためである。角膜移植術では移植片の内皮細胞はより一層減少するが、その減少に大きく影響を与えているのは、手術時における外科的侵襲である。そのため手術時における内皮細胞保護は移植片の生着に重要と考えられる。 角膜内皮細胞はミトコンドリアを多数保有している。ミトコンドリアは高い代謝性を維持することに寄与しており、またミトコンドリアの機能低下は細胞死と密接な関係があると報告されている。一方でシクロスポリンA(CsA)は従来の免疫抑制作用だけでなく、ミトコンドリアの膜電位を安定化させ細胞死を抑制していると報告されている。 目的 CsAの投与により細胞死を抑制できるかどうかヒト培養角膜内皮細胞を用い検討した。方法はヒト培養角膜内皮細胞を用いて、細胞死誘導物質であるH2O2を各濃度(0~1000μM)で刺激し、1時間後に細胞死マーカーであるCaspase-3/7で染色を行い、陽性率をカウントした。次にH2O2とCsAの共刺激でCaspase-3/7およびミトコンドリア膜電位のマーカーであるMitoTracker Red CMXRos の染色を行い、免疫染色及び蛍光吸光度を測定した。 結果 1 培養角膜内皮細胞ではH2O2により量的依存で細胞死を誘導確認できた。2 100nMのCsA存在下でのH2O2の刺激では細胞死の抑制を認めた。3 また同様にミトコンドリアの膜電位の低下の抑制も認めた。マウスの角膜移植片を用い同様の実験を行った。CsA存在下でのH2O2刺激では、培養細胞同様に膜電位低下の抑制を認めた。 結論 CsAは外科的侵襲による角膜内皮細胞のミトコンドリア膜電位の低下を抑制し、細胞死を抑制することを示唆した。今後角膜移植時における内皮細胞の保護に期待できる薬剤と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
外注で注文したスペキュラマイクロスコープ(トーメー社)の開発に時間を要し、当初予定した実験計画(マウス角膜移植の内皮細胞密度の変化)を行えなくなった。そのためin vitroの実験を中心に行った。その結果提出した実験計画の進行がやや遅れている結果となった。 マウスの角膜移植における移植後の内皮細胞評価はネクローシスとアポトーシスが混在しており現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に計画していたin vivoの実験を行う。CsA存在下でのマウス角膜移植で、内皮細胞密度減少が抑制できるかどうか検討する。またin vitroの効果についてもミトコンドリア選択的阻害薬(スタウロスポリン)とCsA存在下での効果の検討することで、データの信頼性を高くする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費はおおむねマウス購入にあてる。
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