2011 Fiscal Year Research-status Report
角膜輪部における角膜幹細胞と角膜神経の関与 ーニューロトロフィンに着目してー
Project/Area Number |
23792015
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
上野 宏樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (30529897)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 角膜 / 三叉神経 / stem/progenitor 細胞 / 神経麻痺性角膜炎 |
Research Abstract |
神経麻痺性角膜炎のモデルとして、electro-coagulationを用いてマウス三叉神経の分枝である眼神経を障害したところ、瞬目反射が欠如し神経麻痺性角膜症様の所見を呈したマウスを作ることに成功した。障害7日後、障害側においてのみ神経のマーカーであるbeta-III tubulinの完全な欠如を免疫染色にて確認した。障害側と反対側は、免疫染色において正常眼と同様なbeta-III tubulin陽性所見を認めた。また、現段階で角膜幹細胞のマーカーとして考えられているATP-binding cassette subfamily G member 2 (ABCG2), p63, hairy enhancer of split 1 (Hes1) 蛋白を免疫染色にて評価したところ発現が低下していた。また、real-time PCRにおいてもいずれのmRNAも低下を示した。特にABCG2は著しく低下していることが認められた。また幹細胞の低下を具体的に定量するために、幹細胞の代替として用いられるside populationを用いてフローサイトメトリーで検出したところ、正常マウス角膜と比べて神経麻痺性角膜症のモデルマウスのside populationは約75%の低下を示した。また、同時に角膜幹細胞の機能評価をcolony-forming-efficiencyを用いたところ、神経麻痺性角膜症のモデルマウスでは、正常のおおよそ50%しかcolonyを形成できなかった。以上より、結論として角膜神経障害後、角膜幹細胞は著しく減少し、また機能においても低下していることがわかった。角膜幹細胞をとりまく環境を維持するために角膜三叉神経は重要な役割を担っているとこのことから示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度の研究計画で予定した、神経麻痺性角膜炎モデルマウスを用いることで角膜三叉神経と角膜stem/progenitorとの関連性を確認できた。研究成果を学会、論文にも報告することができ2012年度の研究計画を更に現在進めている最中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究結果である角膜三叉神経と角膜stem/progenitor細胞との間に相互作用があることを踏まえ、次年度は臨床で診療機会が多い糖尿病と神経関連因子の関与を調査していく。前年度の三叉神経障害モデルマウス作成において、手技が安定するためのかなりの経費が予想された。現段階も過剰な炎症を引き起こさないようにするなど、まだ改良を要する点も多々あるが、ある一定は作成可能となった。次年度の重症2型糖尿病モデルマウス、p75遺伝子欠損マウスは経費がかなりかかることが予想されるため繰り越していき、引き続き三叉神経障害モデルの現方法を改善しつつさらに研究を推進していく。今後は、重症2型糖尿病モデルマウスであるC57BLKS/J 1/1 Lepr Db (db/db)に対して角膜幹細胞障害を外的剥離後、コントロール群(I群)、外的剥離後、神経系幹細胞自己増殖に関与しているといわれる繊維芽細胞増殖因子bFGF(basic fibroblast growth factor)(II群)、外的剥離後ニューロン分化を補助するレチノイン酸(RA)(III群)、神経成熟を促す神経栄養因子(NGF,substance P,BDNFを中心に) (IV群)、もしくはそれぞれの群を組み合わせて投与後、角膜stem/progenitor細胞とp75,TrkA受容体等の神経因子の経過変化を追っていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
重症2型糖尿病モデルマウスであるC57BLKS/J 1/1 Lepr Db (db/db)の購入に次年度の研究費を使用することを主体としていく。また角膜stem/progenitor細胞とp75,TrkA受容体等の神経因子の経過変化を追っていくことを踏まえニューロトロフィンの受容体で代表的な低親和性受容体(p75)と高親和性受容体(trk)の遺伝子欠損マウスも購入していく予定である。
|