2011 Fiscal Year Research-status Report
長幹骨の内軟骨性骨化におけるレチノイン酸の機能解明
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23792042
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
峯岸 芳樹 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10467566)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | レチノイン酸 / 内軟骨性骨化 |
Research Abstract |
レチノイン酸(RA)の分解酵素であるCyp26b1のノックアウト(KO)マウスでは肢芽発生、パターニングに異常をきたし四肢欠損、短肢症を認めることから四肢長幹骨の内軟骨性骨化にRAは深く関与している。しかしながらCYP26B1 KOマウスは高RAの全身影響から胎生致死であるため出生後の成長期にRAが内軟骨性骨化に及ぼす影響は明らかでない。そこでCyp26b1floxマウスを増殖軟骨細胞に特異的にCreリコンビナーゼを産生するCol11a1-Creマウスと交配してCyp26b1 conditional KO(cKO)マウスを作成し、四肢長幹骨の内軟骨性骨化におけるRAの果たす役割について解析している。平成23年度中はCyp26b1+/-、CYP26B1-flox、Col11a1-Creマウスの交配・繁殖を行い、安定してCyp26b1 cKOマウスを繁殖することに成功した。Cyp26b1 cKOマウスは胎生到死ではなく、胎生期~出産前後の時期においては野生型と比較しても明らかな表現系異常は見いだされなかった。cKOマウスは生後3週頃より野生型と比較して低身長になり、中顔面の低形成を呈するようになった。RAの影響により長管骨や頭蓋底の内軟骨性骨化異常がおきていることが示唆された。組織学的検査では脛骨近位成長板軟骨が中央部に限局した早期閉鎖を呈していた。この変化は4週齢頃からおこり、閉鎖部位は生後1年でも中央部に限局したものであった。軟骨成長板は増殖軟骨細胞層の増殖が抑制されており、成長板軟骨細胞は肥大化する方向へ高RAが誘導していることが示唆された。またcKOマウスに見られる表現系異常はビタミンA欠乏食を給餌することで救済されたことから、生体内でRAが内軟骨性骨化に重要な役割を果たしていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度にCyp26b1+/-マウス、CYP26B1 floxマウス、Col11Enh-Creマウスの研究を遂行するにあたり必要なマウス系統を維持し、それらを交配することにより、目的である増殖軟骨細胞特異的にCyp26b1がKOされているcKOマウスを作製し、安定的に供給できる体制を築いた。Cyp26b1 cKOマウスではKOマウスにみられるような胎生期の四肢の形態異常は認められなかったが、出生3週頃より明らかな頭蓋顔面の成長異常(中顔面低形成、咬合不全)、低身長・低体重などの表現系異常が現れてきた。当初の実験計画の予定通り、全身形態を詳細に観察して、四肢・長幹骨や肋骨、その他の部位において表現型の有無を確認した。骨格標本をcKOマウスで作成し、四肢長管骨長の計測やX線撮影、サフラニンO染色、トルイジンブルー& アルザリンレッド染色を行い軟骨形成および内軟骨性骨化による骨形成の異常を解析した。四肢長管骨長は3週齢頃より野生型マウスと比較して優位にcKOマウスで短縮しており、組織学的検査よりその原因は成長板軟骨の中央部に限局的にみられる成長板早期閉鎖であった。またCyp26b1をノックアウトしたことにより組織が高RAになったことが表現系異常の原因であることを示すため、ビタミンA欠乏食を給餌することによりcKOマウスの表現系異常の救済実験を行ったところ、完全ではないが部分的な救済を確認した。さらに免疫化学的しゅほうにより成長板の早期閉鎖は増殖軟骨細胞層の増殖低下が本態であり、それにより生体内で成長板軟骨細胞は肥大化へと進行していることが明らかになっている。以上の進行状況につき、本研究課題は当初の計画通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
CYP26B1 cKOマウスは平成23年度中には作成し、安定して供給できる体制を得ている。形態解析によりcKOマウスの表現型は生後3週齢頃より長管骨の成長板が中央部に限局して徐々に菲薄化していき、4~5週齢頃に同部位のみが成長板の早期閉鎖を起こすことが判明した。 今後の研究推進方策としてckOマウスでみられる表現型の出現に関与するメカニズムの解明を行っていく。具体的には3週齢のマウス脛骨成長板軟骨の未固定非脱灰凍結切片を作成し、免疫組織化学検査によりCyp26a1,b1,c1のレチノイン酸代謝に関与する蛋白や軟骨の成熟に関与する蛋白の局在を野生型マウスとcKOマウスとで比較する。またレーザーマイクロダイセクションを用いて成長板軟骨のmRNAを回収して、生体内で軟骨成熟の過程をリアルタイムPCRで探索する。cKOマウスではレチノイン酸濃度が成長板軟骨で上昇していることをRA濃度を反映するレポーターマウスを用いて示す。またprimary chondrocyteを採取して、培養液中に段階的な濃度でレチノイン酸やオカダ酸を加えて培養し、mRNAを回収してリアルタイムPCRを施行することでレチノイン酸やオカダが軟骨細胞の肥大化もしくは脱分化に及ぼす影響を解明する。マイクロアレイを行い、レチノイン酸により発現量が変化する遺伝子を見出し、新たな軟骨分化に関与するパスウェイを探索する。 研究により得られた知見を関連する学会で発表し、同分野の研究者と意見交換を行って、広く知見を集める。 平成24年度後半から平成25年度にかけては研究結果を公表するため論文執筆を行い、その投稿と査読後の追加実験を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
CYP26B1 cKOマウスを維持するためにはCyp26b1+/-、Cyp26b1 flox、11Enh-Creの各系統を維持する必要がある。その餌食などの管理と系統維持のためのC57BL/6マウスの購入を行う。 実験を行うにあたり基本的に必要なピペットやチップなどの消耗品、細胞培養のための培養液や培養ディッシュの購入を行う。長幹骨などの硬組織を非脱灰で凍結組織切片を作成するためのキットや免疫組織化学検査を行うためのCyp26b1をはじめとするレチノイン酸関連や各種軟骨マーカーの一次抗体、二次抗体、それに関わる薬品の購入をする。また培養軟骨や生体内成長板軟骨からmRNAを回収するためのRNA精製キット、リアルタイムPCR用の試薬、軟骨細胞の肥大化・脱分化を促すオカダ酸などの各種薬剤を購入する。 研究成果を整理・管理するためノートやファイル類、ホッチキス・ノリなどの文房具類、ハードディスクドライブやUSBフラッシュメモリーなどのパソコン関連機器を購入する。 研究で得られた成果は、Cold Spring Harbor Asiaや日本軟骨代謝学会、日本骨代謝学会、各種研究会などで発表を行う。同分野の研究者と意見交換を行い、広く知見を獲得する。学会参加のための交通費・宿泊費を旅費として研究費から計上する。 平成24年度後半から平成25年度にかけては研究結果を公表するため論文執筆を行い、その公正依頼に研究費を用いる。
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