2011 Fiscal Year Research-status Report
ケロイドの線維芽細胞の細胞内情報伝達機構の解明;プリン受容体を中心に
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23792052
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
黒田 敬 岩手医科大学, 医学部, 助教 (30530224)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ATP / 肥厚性瘢痕 / ケロイド / 細胞内カルシウム濃度 / P2受容体 / 共焦点レーザー顕微鏡 |
Research Abstract |
ケロイドおよび肥厚性瘢痕の形成と線維芽細胞におけるプリン受容体の相関を明らかにするために細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)変動指標として反応機構の解析をすすめた。また、蛍光免疫法により細胞内骨格の変化を観察した。表記の研究に関する研究成果はまだ論文発表に至っていないが、現在までに完了したことを以下に列挙する。1.ケロイドおよび肥厚性瘢痕、成熟瘢痕の検体は、ケロイドが1例、肥厚性瘢痕が8例、成熟瘢痕が3例集まった。正常皮膚は全層植皮の余剰皮膚とした。2.これらの検体から線維芽細胞を採取し、ケロイド線維芽細胞、ヒト正常線維芽細胞についてそれぞれP2受容体の反応の相違について検討を行った。Adenosine triphosphate(ATP)およびATP関連物質、P2受容体拮抗物質を用いて細胞を刺激し、細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)変動を共焦点レーザー顕微鏡(LSM)を用いて観察した。ヒト正常線維芽細胞では、P2X受容体、P2Y受容体とも反応を示した。ケロイド線維芽細胞ではP2Y受容体の反応がヒト正常線維芽細胞よりも強く観察されたが、P2X受容体の反応はほとんど観察されなかった。両者でF-actinの染色を行ったところ、ケロイド線維芽細胞で細胞は細長い紡錘形を呈し、F-actinはその形態に沿う配列を示していた。3.2において、ATP刺激による反応性の違いがみられた事から、ケロイド線維芽細胞とヒト正常線維芽細胞の細胞内情報伝達機構に相違がある事が示唆される。また、細胞形態についてもケロイド線維芽細胞では細長い紡錘形を呈し、規則的な細胞配列を呈するなどの特徴がみられた。今後はATP刺激による細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)変動の解析を続けるとともに、蛍光免疫組織化学による受容体の局在や細胞内骨格などの相違について検討を加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の達成目標は3つあり、1.組織標本の採取、2.細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)変動のイメージング可能な標本の作製、3.ATPおよびATP関連物質刺激下での[Ca2+]i変動の観察である。検体の採取および線維芽細胞の培養を行い、蛍光指示薬の細胞内導入を行った後、刺激物質を投与して[Ca2+]i変動を観察する事ができた。蛍光指示薬の導入については至適条件の探索に時間を要したが解決する事ができた。また、その条件下で[Ca2+]i変動を観察し、ケロイド・肥厚性瘢痕および正常ヒト線維芽細胞との刺激物質に対する反応性の相違を捉える事ができた。加えて、細胞形態および細胞内骨格の相違についても検討を加える事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)変動のイメージングを行うとともに、受容体の局在、細胞内骨格の観察を免疫組織化学を用いて行う予定である。また、細胞内の微細構造については電子顕微鏡を用いて観察する予定である。これらの実験を通じて得られた結果をもとに、ケロイド部や肥厚性瘢痕部の線維芽細胞と同様の細胞内情報伝達系を有する線維芽細胞を実験動物で作製できるかどうかを検討する。また、これらの成果について国内学会および国際学会で発表を行い、論文投稿を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養に関する培養液および試薬、ディスポーザブル製品、カルシウムイメージングに関する灌流液や試薬、免疫組織化学に関する抗体および緩衝液、スライドガラスや包埋剤などの消耗品、実験動物(マウス、ラット)の購入費、学会旅費、論文投稿費などに使用する計画である。
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