2011 Fiscal Year Research-status Report
骨髄間葉系幹細胞移植による異所性骨形成モデルを用いた骨形成関連細胞の系譜解析
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23792066
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
田上 隆一郎 久留米大学, 医学部, 助教 (40597457)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 骨再生 / 骨髄間質細胞 / 幹細胞 / 線維芽細胞 |
Research Abstract |
本研究は骨形成に関与する細胞種を,GFPをリポーター分子として利用することで蛍光顕微鏡・共焦点レーザー顕微鏡下に組織化学的に同定し,形態形成や再生過程における骨周辺の細胞の動態および分化誘導等の細胞間相互作用を解明することを目的として実験を遂行した.異所性新生骨を皮下に作成することは,既存骨からの影響が排除できるという点から,骨研究の中でも位置づけは高い. 平成23年度の研究実地計画として1)恒常的に緑色蛍光を発現する"グリーンラット"の間葉系幹細胞を用いた骨形成モデルの確立 2)異所性新生骨形成に関わるドナー由来細胞とレシピエント由来細胞の動態の観察,の2点を施行した. まず,グリーンラット由来の間質細胞を培養して増やし,別のラットの背側皮下部に移植した結果,異所性新生骨を作ることに成功した.また,免疫抑制剤を間欠的に投与することで拒絶反応の抑制が可能であり,グリーンラット細胞をドナーとして野生型へ移植する系と,その逆に,野生型細胞をグリーンラットに移植する2方向の移植モデルを作製することができた. その2つのモデルより得られた骨組織を構成しているGFP陽性細胞とGFP陰性細胞の割合を比較したところ,新生骨の形成には約8割のドナー由来細胞および約2割のレシピエント由来細胞が関与していることを証明した.ここまで解明できた内容については学会で報告後(10th Asia-Pacific Microscopy Conference. Perth Australia, February 2012等),論文報告した(Cells Tissues Organs, DOI: 10.1159/000334409. 2012).これまでの結果は骨再生医療領域において大変意義のある成果であると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた計画として,異所性新生骨モデルを作成することができ,GFPをマーカーとした異所性骨の構成細胞およびその動態を観察することができた.GFPはin vivoにおいて拒絶反応のため退色するという報告がある.そのため,免疫抑制剤を用いた実験を行ったところ,その系でも新生骨形成には約8:2の割合でドナー由来細胞とレシピエント由来細胞の関与を認めた.拒絶反応が強かった場合,動物種やその他の免疫抑制法を検討しなければならなかったが,満足のいく結果が得られたと思われる.何よりも論文掲載にまで至ったことは高く評価できる.現在,移植後2ヶ月目以降の試料を追加観察し,ドナー由来細胞とレシピエント由来細胞の割合の変化について検証を進めている.また,同モデルの骨量や骨密度の変化を動物用マイクロCTにて観察し,計測している.移植片をチタンメッシュケージに填入しているため,過去にある異所性骨のデータと比べ相違点もある.そのため,多種の移植材料を用いて,より骨が形成されやすい条件を探りながら,本モデルの特性についても検証中である.さらに,形成された骨を透過型電子顕微鏡およびFIB/SEMを用いて,正常骨と比較して,骨細胞,細胞突起やそのネットワークに差が無いことを形態的に観察しており,間違いなく,形成された組織が骨組織であることを確認した.本研究を申請した際は,当施設に動物用マイクロCTとFIB/SEMは導入されていなかった.それぞれ申請後に,導入された機器であるが,本来の予定試料の一部を利用するだけで応用できる手技であり,低コストで早く遂行することが可能である.そのため,実験の進行が早く,一部来年度予算をすでに使用しており,滞らせることなく現在の研究を遂行できている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度にかけて,本来骨ができることのない皮下組織において,骨形成に関与する骨芽細胞の起源について解析を進める.平成23年度の結果に示した皮下異所性骨を構成する細胞の約2割を占めるGFP陰性細胞がレシピエント組織のどの部位に由来しているかを調べるために,ドナー細胞の移植予定部位から線維芽細胞を採取する.皮膚を組織培養し,這い出し法にて増える細胞を使用する.ドナー動物はグリーンラットを用いることで生体内において移植細胞のトレースが可能となる. 骨芽細胞の起源として,間葉組織に含まれる未分化細胞が骨形成に関与しているとの説がある.これを証明するために,緑色に光る線維芽細胞とSDラット(野性型ラット)から採取する光らない間質細胞を混ぜてヌードラット背側皮下に移植する.線維芽細胞だけでは骨形成には至らなくても,骨髄間質細胞の存在により新生骨の形成が期待される.形成されると考えられる骨組織のうち,緑色に光る骨形成細胞が観察できれば,皮下の間葉組織を供給源とした骨芽細胞の分化を組織学的に確認できることになる.その移植株に含まれる細胞の種類ついてもフローサイトメトリーや免疫染色等の手法を用いて詳細に比較検討する. また,骨をつくるための足場として現在まで使用していた材料に加え,異なる条件下で骨を作成する工夫を試みるとともに,動物種の違いで差が生じる可能性も検証したいと考える.これらの結果も平成23年度同様,学会発表および論文報告を予定している.さらに,本研究に関与する研究会にも積極的に参加する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
効率的な造骨法および骨芽細胞の起源を検証するために,平成23年度に確立したラット皮下異所性骨モデルをベースに移植細胞および足場となる材料の種類を換え,本研究を遂行する.移植材料にはすでに臨床で用いられているものを使用する.また,異なる動物種でも同様な間質細胞が得られ,骨形成にいたるか否かもあわせて検証する.そのため,平成23年度にひきつづき,in vivo実験に伴う動物,移植材などの消耗品および硬組織の切削器具などを購入する.試料摘出後に用いる抗体などはもちろん,試料の電子顕微鏡やマイクロCT観察に必要な特化した消耗品も購入する.また,大量のデータ管理および解析のためのシステムの導入も検討する. 申請者が本研究を遂行し,質の高い成果を得るために,新しい手技やより最先端な知見を得ることも必要である.骨研究を先進的に行っている研究者(国外を含む)とも交流を深めることで,当研究室の形態的アプローチに加え,他の研究室で行われている手技を学ぶとともに,前年度同様,国際学会での発表や研究打ち合わせ会へ参加する.論文報告も準備が整い次第,投稿する.
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Research Products
(3 results)