2011 Fiscal Year Research-status Report
血管内経時的測定法を用いたスーパーオキシドアニオンラジカルの発生源と産生量の検討
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23792074
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
戸谷 昌樹 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (00585721)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | フリーラジカル / スーパーオキシドアニオンラジカル / 生体内持続ラジカル測定法 / 前脳虚血再潅流 / 中大脳動脈閉塞 / マロン酸アルデヒド / HMGB1 / ICAM-1 |
Research Abstract |
本研究では、生体侵襲の原因物質となり得るスーパーオキシドアニオンラジカル(O2-・)の動態を生体内で測定し、酸化ストレス傷害の病態を解明することである。生体内の測定には、生体内で安定している鉄ポルフィリン重合膜を用いた全合成型の電気化学活性酸素種センサーを用いて測定した。センサーはそれぞれO2-・濃度に対する感度にばらつきがあるため、生体内で測定をする前に補正する必要があった。また、生体内で測定した場合、センサー反応部への血栓付着が問題となることが判明した。そのため、生体内で測定する前後でセンサー感度を測定し校正をしている。 このセンサーの最終目標は人間へ応用することである。そのため、中型動物であるビーグルを用いて実験を行った。心室細動による心停止モデルを用いた。心停止時にはO2-・電流値は低下し、心拍再開後には大きく上昇した。その後、時間とともに徐々に低下をした。実験終了後の電極を調べてみると、センサー反応部への血栓付着が認められた。実験終了後のセンサー感度は大幅に減少していた。中型動物を用いた中長時間の実験では血栓付着によりセンサー感度が確保できず、今後検討が必要と考えられた。 血管内で産生されるO2-・の発生源として、nicotinamide adenine dinucleotide phosphate (NADPH)オキシダーゼとxanthine oxidase (XO)が大きく関与していると考えられている。ラット前脳虚血再潅流モデルを用いて静脈血内でのO2-・電流値を測定した。また、NADPHオキシダーゼ抑制剤であるApocynin、XO阻害剤であるAllopurinolを用いてどちらがよりO2-・の産生に関与しているのか測定している。Apocynin投与群では、Control群に比べて電流値が抑制されており、O2-・の産生が抑制されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
センサーの感度を測定すると、センサーごとにO2-・濃度に対する感度にばらつきがあることが判明した。また、生体内測定後は血栓の付着などの理由からセンサー感度が低下していた。センサーの使用前後でO2-・感度を補正する必要があることがわかった。そのため現在は生体内測定の前後でセンサー精度を測定している。 ビーグルを用いた心肺停止モデルを用いて、中型動物で長時間の測定が出来るかを検討した。測定結果から短期的にはO2-・の測定が可能であったが、感度低下の評価が必要であり、また長時間の測定では血栓の付着が多くなるため抗凝固剤の使用や実験モデルの変更など今後の検討が必要と考えられた。 ラットを用いたApocynin/Allopurinolモデルでは、センサーの生体内測定の前後で感度を測定して校正することにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
前脳虚血再潅流後のO2-・発生源の検索として、NADPHオキシダーゼ抑制剤であるApocynin、XO阻害剤であるAllopurinolを用いてO2-・センサー、血液、組織標本を用いて酸化ストレス傷害の測定を行っていく。組織および血液の酸化ストレスマーカーおよび炎症マーカーを測定し、血管内で測定したO2-・電流値との関係を明らかにする。センサーはそれぞれO2-・濃度に対する感度が異なるため、測定前に生体外で感度を測定して校正している。 また、より小さな侵襲においてO2-・の発生量がセンサーで測定できる限界を上回るか調べる必要がある。そのため、中大脳動脈閉塞モデルを用いて脳虚血範囲とO2-・測定量の関係を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は実験で使用するセンサーにばらつきがあることが判明し、生体を用いた実験を一時中断していたため購入予定であったラット、ビーグル、分析用器具、分析用試薬の購入が予定より減少した。 しかし、現在は生体実験を行う前後でセンサーの感度を測定し、感度のばらつきについては解決している。そのため、今年度は昨年度分のラットの購入、動物飼育管理料が必要となる予定である。さらに、昨年購入予定であった実験周辺器機として血液ガス分析装置の試薬、組織切片を冷凍するための液体窒素が必要となる。さらに、測定後には組織と血液の酸化ストレス傷害の指標としてマロン酸アルデヒド(MDA:脂質過酸化物質)、HMGB-1(急性期炎症反応の指標)、ICAM1(血管内皮細胞傷害の指標)などの測定を予定しており、分析用試薬が購入する予定である。また、成果の学会発表、論文発表のために参加費、投稿料が必要となる。
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