2011 Fiscal Year Research-status Report
単球系細胞のPPARγ活性化による敗血症病態の解明と新しい治療法の開発
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23792079
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
深澤 まどか 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (30530357)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | RNA干渉法 / 単球系細胞 |
Research Abstract |
我々はグレリンのPPARγ増強作用を介した細胞死抑制効果に注目し、実験を行った。分化型THP-1細胞、ヒトMacrophageにLPSを投与後72時間、糖濃度の異なる培養液で培養を行い、細胞内及び培養液のサイトカイン濃度(IL1b, IL6, IL8, IL10, TNFa)、HMGB-1、HSP70濃度、アポトーシス(細胞内Akt, p38MAPK リン酸化/Total(比)変化の定量、細胞内ミトコンドリア膜電位変化、Bcl-xl, Bcl-2/Bax, Bak発現比の解析、Caspase 3, 9)、オートファジーの発現(細胞内LC3-2/1比, Beclin1発現、細胞内PI3K, mTOR activity、mTORのリン酸化/Total(比)変化定量)について観察し、LPS及び高糖濃度負荷が及ぼす細胞内情報伝達系と細胞死の関係を解析し、さらにPPARγアゴニストとしてのグレリンによる抑制効果を解析した。 研究結果として明らかになったことは、LPS及び生理的な高糖濃度負荷により、単球系細胞内のAktのリン酸化が抑制されることで、細胞死変化が促進されると共に、ファゴサイトーシスが抑制されたが、グレリン投与により細胞内PPARγ活性が上昇し、その変化が抑制された。 次に、細胞内情報伝達系のPI3K/Akt経路を抑制する目的でAkt1に対するsiRNAを単球系THP-1細胞、ヒトMonocyte/MacrophageにNucleofection法により遺伝子導入することで、先に観察したグレリンにおける細胞死抑制効果がどのように変化するかを観察した。実験結果として、Akt1 をノックダウンすることでグレリンの効果が消失した。従って、グレリンは、PI3K/Akt経路を介して細胞死抑制及びファゴサイトーシス促進していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
THP-1(単球系培養細胞)またはヒトMonocyte/Macrophageを用いた細胞培養実験において、PPARγアゴニストのロジグリタゾン5uM投与によりLPSによる細胞死変化は抑制(Caspase3の発現低下、LC3 IIの発現軽度上昇)されたが、25uM投与により逆に細胞死が促進された(Caspase3の発現上昇、LC3 IIの発現上昇)した事を解明している。また、グレリン投与によりPPARγ活性が上昇し、細胞死変化が抑制された。これらは、PPARγ活性の適度な上昇が炎症治癒期において単球・マクロファージ系を介して、免疫提示機能を賦活したり、細胞死を起こした細胞を貪食する事(Phagocytosis)で治癒過程を促進する可能性があると考察する。 しかし、実験途中においてmicor RNAの実験において興味深い実験結果を得たので、動物実験系においては中断を余儀なくされている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究途中で、我々はmiRNA 定量的PCR Array (Taqman Array MicroRNA Card, Applied Biosystems社)を用いた予備実験により、高血糖またはLPS刺激による単球系細胞の経時的な変化において、miR-21, miR-155, let7-a, let7-e の発現と、貪食能低下及び細胞死の増加に相関関係がある可能性が示唆されたため、これらのmiRNAの生体内の発現を制御することで、敗血症における生存率改善が図れるとの仮説の元、今年度は、実験を行う予定にしている。具体的には以下の実験プロトコールを組んでいる。 濃度の異なる溶液を用いた細胞培養実験にてLPS投与後の、THP-1細胞、Monocyte/MacrophageにおけるmiRNAの発現変化を観察し、貪食能や細胞死に関連するタンパク質のmRNAと相補的な配列を持つmiRNAの候補をデータベースで探索すること。また、候補に上がったmiRNA mimicを遺伝子導入することや、特異的な阻害薬のanti-miRを投与することで、貪食能低下、細胞死の変化を観察すること。また、グレリン投与により以上の変化がどのように修飾されるかを観察し、グレリンの炎症促進効果のメカニズムについて解明する予定にしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に用いられる試薬(miRNA関連品、PCR関連品、インヒビター、抗体、ペプチド、ELISAキット、Nulcleofection法を用いた関連試薬、培養関連品等)は大変高価である。 フローサイトメトリー用の抗体は、固定標本に比べ染色時に高濃度の抗体を要する為、使用量が多くなる。また、ペプチド、ELISAキット、Nuleofection キットについては、1バイアル、1キット当たり5万円から20万円程度であり、1回の実験で2万円から5万円程度のコストを要する時もあるため、本年度は殆どを消耗品費に使用する予定にしている。
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