2013 Fiscal Year Annual Research Report
上皮間葉相互移行を標的とした急性肺損傷後の上皮修復メカニズムの解明と治療への応用
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23792081
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
橋本 壮志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60515279)
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Keywords | 急性肺損傷 / 急性呼吸窮迫症候群 / 人工呼吸 / 上皮間葉形質転換 |
Research Abstract |
急性肺損傷/急性呼吸窮迫症候群(ALI/ARDS)の病態の中心は、さまざまな生体侵襲に対する免疫系の活性化に伴う肺の非特異的炎症反応および透過性亢進に起因する肺水腫である。このため、以前より抗炎症作用に主眼を置いた治療法の開発が行われてきた。抗炎症療法は理論的にはALI/ARDSの病態を沈静化しうると考えられるが、実際には治療開始の時期や本症候群の病態そのものの多様性などの問題から、科学的根拠が得られるほどの治療効果は達成できていない。近年、再生医療分野の発展とともに、ALI/ARDSに対する幹細胞移植の有効性に関しても、動物実験レベルで検討がなされている。そして実際に、間葉系幹細胞移植は肺損傷後の上皮修復に有効であるばかりか、炎症反応の修飾作用をも併せ持っていることが明らかとなっている。しかし、幹細胞移植による再生治療の臨床応用には様々な障壁があることも事実である。一方で、薬物学的に上皮修復・再生を誘導し、肺胞の正常機能を回復させることができれば、近未来的に実現可能な治療法となりうる。特に肺の基本的特性ともいえるガス交換機能の早期回復は、人工呼吸器装着期間を短縮し、集中治療に伴う多大な人的ならびに医療資源の削減に寄与し、また医学的にもALI/ARDSの生命予後の改善に貢献する可能性があると考える。われわれは、塩酸片肺気管内投与によるALI/ARDSモデルマウスを用いて、肺損傷後の修復メカニズムに関して上皮間葉形質転換(EMT)を中心に調査を試みた。モデルマウスへのトロンボモジュリン製剤の投与により組織学的な肺線維化の程度は改善の傾向を示した。一方で気管支肺胞浄液中の炎症細胞浸潤の程度に違いは認められず、さらなる検討が必要と考えられた。
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