2011 Fiscal Year Research-status Report
全身性炎症反応症候群(SIRS)のトリガーとしてのアデノシン3リン酸(ATP)
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23792086
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
角 由佳 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40403084)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アデノシン三リン酸 / 好中球 / 全身性炎症反応症候群 / 敗血症 / CD11b |
Research Abstract |
本研究は、臨床症例において、敗血症を代表とした全身性炎症反応症候群の炎症トリガーとして、ATPがどのような役割を示しているのかを明らかにすることを目的としている。1.初年度として、まずATPの測定系を確立した。採血法としては、静脈採血、動脈穿刺採血、留置された動脈ラインからの動脈血採血によるATP値を比較し、動脈ラインからの採血が安定した値が得られることを明らかにした。ATP迅速測定器(ルミテスター)による測定と同時に血漿を保存し、アメリカの研究室に検体を送り、ルミテスターによるATP値と、従来の高速液体クロマトグラフィーによるATP値で整合性があることを明らかにした。ただし、ATPが並はずれて高値の場合、クロマトグラフィーでは検出できるが、ルミテスターでは感知できないという限界もあることが分かった。2.健常人では、ATP値が30nM 前後であるのに対し、敗血症では110nM(入院初日)と上昇し、その後臨床症状の改善と共に低下していくことがわかった。超急性期に上昇しその後すみやかに低下していく傾向がみうけられ、炎症の急性期に関与していることが示唆されている。3.重症度スコアや、白血球数 CRPなどの炎症の指標となる検査結果との統計学的な相関関係は現在のところ認められず、さらに症例の積み重ねが必要である。4.好中球の活性化指標としてのCD11b発現は、敗血症において健常人より明らかに高値であることを示すことができたが、血漿中ATP濃度との相関関係は現在検討中である。今後、さらに症例を重ねて、採血のタイミングなどを工夫し、経時的変化にも注目して検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健常ボランテイアを集めるために、ホームページや院内掲示板を使って啓蒙しているものの、なかなか集まらないこと。院内の倫理委員会の許可を得るのに、時間がかかったことなどが、原因に挙げられるが、ATPがSIRS患者の血中においてあがっているという結果が得られ始めており、積極的に進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
症例を重ねて、採血タイミングを検討しATPの経時的変化と、各種臨床マーカーとの相関関係を見出す。敗血症以外のどのようなSIRS症例でATP高値を示すのかも検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際ショック学会および日本炎症再生学会に、抄録を提出済みであり、積極的に学会発表を行うための参加費や、ボランテイアへの協力費、海外の研究協力者へ検体を送る費用そして白血球機能の評価に使う抗体の購入などに研究費を使用予定である。
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