2011 Fiscal Year Research-status Report
新たな免疫強化療法としてのIL-15の可能性~高齢者敗血症の治療法を探る~
Project/Area Number |
23792088
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
井上 茂亮 東海大学, 創造科学技術研究機構, 講師 (30582209)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 敗血症 / 老化 |
Research Abstract |
敗血症は死亡率の高い重篤な全身性感染症である。高齢者では敗血症が重篤化しやすいが、その病態はいまだ不明である。敗血症は免疫応答細胞のアポトーシスを引き起こし、免疫力を低下させる。申請者はCD8陽性T細胞・NK細胞の成長因子であるIL-15がマウス敗血症モデルにおける免疫応答細胞のアポトーシスを抑制し、マウスの敗血症予後を改善することを発見した。本研究の目的は、高齢ヒト末梢リンパ球敗血症モデルと高齢マウス敗血症モデルの免疫機能解析を行うとともに、IL-15の高齢敗血症への効果を明らかにし、新たな免疫強化療法を目指すことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
65歳以上の高齢者では、18歳から64歳の成人と比較して、T細胞を活性化する受容体であるCD28陽性率が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞において有意に減少していた(各10%、30%減少、p<0.01)。また高齢者のCD4+およびCD8+T細胞では、T細胞を非活性化する受容体であるprogramed death-1(PD-1)の陽性率が成人と比較して上昇傾向であった。この高齢者のCD4+T細胞にそれぞれLPS刺激を加え24時間培養することで、PD-1陽性率は有意に上昇した。(各12% vs 7%, p<0.01)高齢マウス(生後2年)では若年マウス(生後4-6週間)と比較して 脾臓および腸管リンパ節におけるCD4+ T細胞のPD-1陽性率が有意に上昇していた(脾臓18 vs 70%)。またPD-1同様、T細胞を抑制的に制御する受容体である Cytotoxic T lymphocyte antigen 4 (CTLA-4)の発現率も若年マウスと比較して、高齢マウスで陽性率が増加していた(脾臓1vs 4%)。また高齢CLPマウスではその陽性率が6%に上昇し、敗血症侵襲でT細胞が活性化されにくい状況に陥っていることが明らかになった。さらに活性化T細胞の一つのサブタイプであり、T細胞の活性や増殖を抑制する制御性T細胞の陽性率は加齢と共に増加し(若年3%、高齢10%; p<0.01)、さらに高齢CLPマウスでの陽性率は18%までに上昇していた。以上より、高齢マウスに敗血症侵襲が加わることで、さらなる制御性T細胞の増加に関係していることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1 高齢ヒト末梢リンパ球敗血症モデルにIL-15を添加し、免疫機能改善効果を解析する。 実験1-1の系で、組み換えタンパクIL-15を高齢ヒト末梢血単核球培養液に付加し、IL-15が免疫応答を賦活化するかを明らかにする。申請者はLPSやIL-6により炎症反応を惹起することでさらなるCD8陽性T細胞数ならびにNK細胞数を減少し、L-15がその病態を改善すると予想している。解析項目は実験1-1に準じて行う。2 高齢マウス敗血症モデルにIL-15を添加し、免疫機能改善効果と生存率を解析する。A)免疫応答細胞解析 実験1-2の系で、高齢マウス敗血症モデルを作成後IL-15または生食を皮下注射する。24時間後に血球系細胞を回収し、実験1-2のとおり免疫応答細胞を解析し、各群で比較検討しIL-15の高齢マウス敗血症モデルにおける効果を判定する。B)サバイバルスタディー 高齢マウス敗血症モデルを作成後IL-15または生食を皮下注射する。7日後にIL-15を投与した高齢敗血症マウスとコントロールの生存率を比較する。3 高齢IL-15ノックアウトマウスの敗血症における免疫機能と生存率を解析する。高齢IL-15 K/OマウスにLPS投与またはCLPモデルを作成し、24時間後に血球系細胞を回収し、実験1-2のとおり免疫応答細胞を解析し、各群で比較検討する。また高齢IL-15 K/Oマウス敗血症モデルと高齢マウス敗血症モデルの生存率を比較する。さらに、IL-15 K/O敗血症マウスにIL-15を投与し、CD8T細胞やNK細胞の数や機能、および敗血症生存率が改善するかを明らかにする。 研究予算の次年度への繰越理由として、1) 高齢ヒト末梢血単核球の培養系の確立、2)生後10ヶ月マウスの2歳までの高齢化、3) IL-15K/Oマウスの購入手続き、などに時間を要したためである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フローサイトメトリー試薬 2000千円病理組織染色試薬 2000千円 分子生物学的試薬 3000千円、細胞培養試薬 3000千円 サイトカイン測定キット 30000千円 プラスチック器具 3000千円 組み換えタンパクIL-15 3000千円フローサイトメトリー試薬、分子生物学的試薬、プラスチック器具、サイトカイン測定キット、組み換えタンパクIL-15は、高齢マウスおよびヒトリンパ球の免疫機能解析およびIL-15添加実験で使用予定。病理組病理組織染色試薬は高齢マウスの免疫機能解析およびIL-15添加実験で使用予定。細胞培養試薬は高齢ヒトリンパ球の免疫機能解析およびIL-15添加実験で使用予定。
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Research Products
(3 results)