2013 Fiscal Year Annual Research Report
上行結腸穿孔敗血症モデルにおける転写因子エヌエフカッパビーとアラキドン酸の役割
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23792090
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
虻川 有香子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00318148)
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Keywords | 敗血症 / NFkBデコイ / アラキドン酸カスケード |
Research Abstract |
我々は臨床に即したモデルとしてマウスの上行結腸穿孔ステント敗血症モデル(CASP)を確立し、その24時間死亡率は27%であった。同じモデルに炎症関連分子の発現の抑制作用をもつNFkB認識配列を有する二本鎖オリゴヌクレオチド(NFkBデコイ)を治療薬として投与した。本剤を腹腔内投与し、投与方法を2群にわけた。NFkBデコイ200μgを上行結腸穿孔ステント術後に単回投与する群(NFkB群)N=12と16時間前に100μg投与後術後に200μg投与する群(pre NFKB群)N=12とした。 NFkB群の死亡率は25%と有意には減少しなかったが、pre NFkB群では死亡率は0%であり改善された。CASP群の体重減少は5.9%、NFkB群では7.7%、Pre NFkB群では1.6%だった。各群の気管内洗浄液中のロイコトリエンの濃度は、CASP群4.2ng/mlがNFkB群1.2 ng/ml、pre NFkB群では1.3ng/mlと有意に減少した。このことは、腹腔内投与により腹腔内の炎症が抑えられ、肺への炎症も抑えられた結果であると考えられる。今回の実験では臨床的にも腹腔内投与で簡便で著しい侵襲性を要せず、消化管穿孔の手術待機時の敗血症性ショックの予防ともなる可能性がある。 今回の測定で各群の気管内洗浄液中のTNF-αは、有意差はなかった。これはTNF-αの発現時間によると思われる。効果を判定するには、治療後6時間などのもっと早期の測定が必要な可能性がある。より効果を得るためには、HVJリポソームなどでNFkBデコイを封入し、静脈内投与し肺に集積させ肺への炎症抑制を強めるなどの工夫が今後必要となってくると思われる。また今回は上行結腸にステントを留置したため、腸管の修復はなかったが穿孔によるモデルでは、さらなる改善が期待できる可能性がある。
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