2011 Fiscal Year Research-status Report
低酸素環境における腫瘍血管内皮細胞の異常性獲得機序に関する研究
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23792096
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
北山 和子 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 特任助教 (10515068)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 腫瘍血管内皮細胞 / 間葉系幹細胞 / 無血清培地 / 低酸素 |
Research Abstract |
血管内皮細胞(EC)は腫瘍組織を構成する間質細胞としてがんの悪性化へ関与する。その際、腫瘍血管内皮細胞(TEC)自身が異常性を獲得する事が示唆されている。腫瘍由来の細胞や間質組織を構成する線維芽細胞などと比較してEC/TECは繊細であるため、その培養は一般に2%~20%血清とVEGFなどの栄養因子存在下で行われる。 一方、腫瘍微小環境におけるがんの悪性因子を決定するための技術基盤として、コンディション培地(CM)のサイトカインアレイやLC-MSによる網羅的な解析が可能になった。しかし、EC培養培地は血清を含むうえ販売されている種々のEC培地組成情報も完全には提供されていないため、腫瘍微小環境におけるEC異常性獲得に関わる因子同定が困難になっている。 申請者は平成23年度より広島大学歯学部加藤幸夫研究室に移籍したため間葉系幹細胞(MSC)及びこれらが培養できる組成の明確な無血清培地(STK)を利用して研究できる機会を得た。 損傷を受けた非腫瘍組織の修復にはMSCとECの相互作用が重要で、組織再生にはMSCとECの両方が必要である報告が多々ある。しかし、腫瘍組織においてはおそらくECの性質が変容しているため、MSCとの相互作用がもたらす効果は非腫瘍組織の場合と異なる。細胞の接着性や微小血管内皮細胞の培養への条件設定など克服すべき点は多々あるが、STK培地は腫瘍微小環境を構成する線維芽細胞や腫瘍細胞そのものの培養にも適応できるため、STK培地組成を微調整してEC培養を可能にする事によって腫瘍微小環境におけるがんの悪性化をもたらす因子同定を可能にする技術基盤を提供できる意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請時の所属から異動に伴い申請時の所属研究室でもっていた未発表のデータやマテリアルを使用できなくなったため、実験系をはじめすべての条件を変更せざるを得なくなった。その際に、現所属研究室でもっているマテリアルや情報をもちいて新たな実験計画を立てたが、予想していた通りに系が動かなかったため、研究計画修正が必要となってきた。 計画では加藤研究室で開発した無血清培地STKをもちいて血管内皮細胞の培養系を立ち上げ、株化されたがん細胞のコンディション培地や低酸素状態での培養などの組み合わせにより増殖能が増大した異常血管内皮培養細胞を獲得し、それらの遺伝子発現解析を行うことでマーカー候補を探索する予定であった。しかし、間質組織を構成する他の間葉系幹細胞や線維芽細胞に比較して血管内皮細胞は接着に弱いため、無血清状態で細胞増殖させるのが困難であった。現時点では、HUVECで無血清培養が可能になりつつあるが、HEMVECでは細胞が接着しなかったため条件検討中である。そのため、無血清培地で異常増殖した血管内皮細胞の網羅的な遺伝子発現解析をするという当初の計画は達成できていない。 一方、現所属研究室で開発されたSTK培地は間葉系幹細胞や線維芽細胞といった間質組織を構成する細胞の培養が可能であるため、別プロジェクトでおこなったこれらの細胞のSTK培地増殖した遺伝子発現の網羅的解析データを持っている。これらの理由により腫瘍を構成するがん細胞、間質を構成する間葉系幹細胞および線維芽細胞との共同作用を研究するための基盤を作るための無血清培地を用いた血管内皮細胞培養系の確立の条件検討をおこなうために計画を修正する。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍組織の悪性化、たとえばがん細胞の転移や未分化能の獲得には周辺の間質組織を構成する細胞のふるまいが大きく関与する。腫瘍間質に存在する血管内皮細胞の悪性化のプロセスも、がんの悪性化に大きく関与すると考えられる。ゆえに腫瘍間質細胞群の腫瘍組織における相互作用を理解する事は重要である。 現在おかれている研究環境下でこの問題を解決するための糸口として1)in vitroの細胞培養系でこれらの細胞群の相互作用を解析できる培養系を確立する、2)正常血管内皮細胞が悪性化していく過程を擬似化しその際に関与しうる分子マーカーを探す事を目的とする。 腫瘍血管内皮細胞の悪性化に関与する分子マーカーを探索する際に、培地に血清が入っていると探索が困難になるとおもわれる。 腫瘍間質組織を構成する血管内皮細胞以外のおもな細胞、線維芽細胞と間葉系幹細胞は、無血清培地STKで培養可能である。したがって1)正常血管内皮細胞の無血清培地培養系をたちあげ、2)そのうえで腫瘍組織を構成するその他の細胞の無血清培養系と組み合わせ(コンディション培地の利用、共培養)および低酸素培養条件をくみあわせることによって正常血管内皮細胞を悪性化するモデルができるか試してみる。そのうえで腫瘍血管内皮細胞の悪性化に関与する分子マーカーを探索する、あるいは報告のある腫瘍血管マーカー分子の挙動を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度はヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)がマトリゲルコートしたディッシュ上で無血清培地STK1をもちいて接着、培養できる事がわかったが、この無血清培地培養は血清培地培養に比べて不安定である。さらにヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)はHUVECとは異なり、無血清培地下ではマトリゲルコートディッシュでも接着能が弱いため培養が継続できなかった。今年度は1)HUVECの無血清培地培養系の安定化に取り組むと同時に、無血清培地培養した間葉系幹細胞のコンディションの培地の正常血管内皮細胞の増殖における影響を検討する。2)HMVECを無血清培地培養できるような系を探索して確立する。そのために細胞接着を強化できる細胞外マトリックスを検討してみる。3)さらに1)の系にSTK培地または血清をのぞいた基本培地で増殖したがん細胞のコンディション培地の影響も検討する。そのために、研究費は無血清培地STKおよびHMVECの細胞接着を亢進させて無血清培養を可能にするための細胞外基質の購入に費やす。
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[Journal Article] Identification of mono- and disulfated N-acetyl-lactosaminyl Oligosaccharide structures as epitopes specifically recognized by humanized monoclonal antibody HMOCC-1 raised against ovarian cancer.2012
Author(s)
Shibata TK, Matsumura F, Wang P, Yu S, Chou CC, Khoo KH, Kitayama K, Akama TO, Sugihara K, Kanayama N, Kojima-Aikawa K, Seeberger PH, Fukuda M, Suzuki A, Aoki D, Fukuda MN.
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Journal Title
J. Biol. Chem
Volume: 287(9)
Pages: 6592-6602
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Prostacyclin receptor in tumor endothelial cells promotes angiogenesis in an autocrine manner.2012
Author(s)
Osawa T, Ohga N, Hida Y, Kitayama K, Akiyama K, Onodera Y, Fujie M, Shinohara N, Shindoh M, Nonomura K, Hida K.
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Journal Title
Cancer Sci
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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