2012 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝要因と環境要因の複合作用による口唇裂研究モデルの新規構築
Project/Area Number |
23792098
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中富 満城 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10571771)
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Keywords | 顔面発生 / 口唇裂 / 口蓋裂 |
Research Abstract |
口唇口蓋裂は口腔顎顔面領域で最も頻度の高い先天異常であり、その成因として遺伝要因と環境要因の複合による多因子閾値モデルが提唱されてきているが、詳細な発症メカニズムは未解明のままである。従来の研究モデルは遺伝要因と環境要因をそれぞれ別個に解析したものが主であったので、本研究において我々は両者を組み合わせた新しい研究モデルの構築を試みた。遺伝要因としてヒトにおける口唇口蓋裂のリスク遺伝子である事が知られているMsx1遺伝子の変異マウスを用いた。環境要因としてまずヒトで催奇形性が知られている抗てんかん治療薬のフェニトインを用いた。フェニトインは母獣に低酸素状態を惹起する事が知られている。Msx1遺伝子変異マウスの妊娠母獣にフェニトインを投与し、野生型と変異型の胎仔間における顎顔面形態形成の異常の有無を比較した結果、変異型胎仔は野生型胎仔よりも有意に高い口唇口蓋裂の発症率を示した。次に本実験系における催奇形性が母獣の低酸素状態を主因とするものか、フェニトイン特有の薬理作用によるものかを峻別する為、酸素濃度調節機能付きマウス飼育ケージを導入して比較検討を行った。その結果、Msx1変異胎仔は野生型と比較して有意に高率に口唇口蓋裂を発症した。これらの実験結果により遺伝的リスクを有する個体が環境的リスクに曝露されると先天異常の確率が飛躍的に高まる事が明らかとなり、従来は理論的説明に留まっていた多因子閾値モデルを具体的に実証する成果が得られた。またBL6系統の変異マウスはCD1系統の変異マウスよりもフェニトインに対する感受性が高い事も明らかとなった。ヒトにおいても口唇口蓋裂の発症率は人種間で大きく異なる事が知られており、我々の研究結果により系統間の遺伝的バックグラウンドの差異が環境要因に対する感受性の高低に影響を与える可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)