2011 Fiscal Year Research-status Report
LDL受容体ファミリーを介したF-spondinの硬組織破壊調節機構の解明
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23792103
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡 広子 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (60452588)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 硬組織破壊 / 受容体 |
Research Abstract |
本年度は、F-spondinの硬組織破壊抑制作用における各LDL受容体の役割を明らかにする目的で、硬組織破壊細胞への分化能を有するマウス細胞を用いて、以下の検討を行った。1. 硬組織破壊に関与する細胞におけるLDL受容体ファミリーの発現の有無と発現変化:RT-PCRを用いて、硬組織破壊細胞への分化能を有するマウス骨髄由来マクロファージにVLDLR、Lrp2、Lrp4、Lrp8の発現を、RAW264細胞にLrp2、Lrp4、Lrp8の発現を認めた。破骨細胞への分化を誘導するRANKL刺激後、RAW264細胞におけるLrp2、Lrp8のmRNA発現はコントロール群に対して有意な差を認めなかった。また、コントロール群の Lrp2、Lrp8のmRNA発現は時間の経過とともに減少した。2. 破骨細胞前駆細胞の遊走・分化に及ぼすF-spondinの影響とその経路(Lrp8,Lrp2,Lrp4,VLDLR,その他):RAW264細胞とLrp8siRNAを用いた検討で、F-spondinがLrp8を介してM-CSFが引き起こす破骨細胞前駆細胞の遊走に関与することが明らかとなった。LDL受容体ファミリーアンタゴニストは、F-spondinによるRANKL刺激後の破骨細胞分化抑制作用を一部解消した。また、LDL受容体ファミリーアンタゴニスト投与自体がRANKL刺激後の破骨細胞分化を抑制することも明らかとなった。LDL受容体ファミリーの一部がF-spondinとは別の経路で破骨細胞分化誘導に関わっている可能性が示唆された。現在siRNAを用いて各受容体の影響を検討中である。3. F-spondin過剰発現:別の研究グループにより、F-spondin過剰発現Tgマウスが確立されたため、同Tgマウスの細胞を用いた実験実現の可能性が高まった。現在、実験実施のため所属機関の手続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、LDL受容体ファミリーに属する各受容体に注目し,F-spondinとLDL受容体を介した硬組織破壊制御の機構を解明することである。平成23年度行う予定であった計画は下記の通りである。培養細胞の維持、継続的な供給体制、動物モデルは計画の時点で確立されていた。1.硬組織破壊に関与する細胞におけるLDL受容体ファミリーの発現の有無2.正常歯周組織および炎症刺激を受けた歯周組織におけるLDL受容体ファミリーの発現分布3.破骨細胞前駆細胞の遊走・分化に及ぼすF-spondinの影響とその経路(Lrp8,megalin/Lrp2,Lrp4,VLDL受容体,その他)このうち、硬組織破壊細胞に注目して進めている1、2、3の培養細胞を用いた検討はおおむね計画通り実行され、1についてはmRNAレベルで結果を得ている。3に関してはLrp8がF-spondinの破骨細胞前駆細胞の遊走制御に関わっていることが明らかとなった。また、F-spondin過剰発現マウスも別の研究グループで確立でき、24年度の計画に向けて順調に手続きが進んでいる。動物モデルの歯周組織は組織切片標本を用いて受容体の発現分布を検討する予定であった。しかし、組織染色試薬の検討ため計画が予定よりも遅延している。必要によっては、組織切片標本ではなく部位ごとの組織自体を用いて検討する可能性もある。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時の研究実施計画では、平成24年度は前年度に引き続き「破骨細胞前駆細胞の遊走・分化に及ぼすF-spondinの影響とその経路(Lrp8,megalin/Lrp2,Lrp4,VLDL受容体,その他)」を検討する計画であった。破骨細胞前駆細胞の遊走に関してはF-spondin Lrp8が関与していることが既に明らかになったが、大きく発現している他の受容体に関しても24年度にsiRNAを用いて影響の有無を検討する。また、F-spondinの破骨細胞分化抑制作用についてLDL受容体ファミリーを介した経路の影響を検討する。Tgマウスの手続きが終了次第、プライマリー細胞におけるF-spondinの発現度を確認し、F-spondin過剰発現細胞におけるLDL受容体ファミリー発現と破骨細胞分化への影響を野生型と比較して検討する。Tgマウスのカルバリア細胞に安定的なF-spondinの過剰発現が確認できた場合は、同細胞を使用して平成25年度に実施予定のF-spondinの骨芽細胞におけるRANKL、OPGの発現変化や骨芽細胞-前破骨細胞共培養系を用いての検討の予定を早めて実施する。一方で、前年度実施予定の動物モデルの歯周組織は組織切片標本を用いた検討は、組織染色試薬の検討ため計画が予定よりも遅延している。必要によっては、組織切片標本ではなく部位ごとの組織自体を用いて検討に変更する可能性も考慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おおむね予定通りの物品費、旅費、その他の内訳で使用予定である。成果発表予定であった海外学会の日程が最終年度内(25年度)にないため、当初の予定を入れ替えて24年度に中間結果を海外学会、翌年度は国内学会での発表と変更になる可能性が高い。その場合は旅費等を軽微に調整して対応する。
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